今回は抗菌薬と耐性菌について
なぜ風邪に対して、抗菌薬をむやみに使ってはいけないのでしょうか?そこから考えていきましょう。
耐性菌とは
抗菌薬には次のような問題点があります。
どれも大きな問題ですが、その中でも最も重要な問題は耐性菌だと思います。
これは人類の未来を左右しかねない極めて危険な問題だからです。
そもそも、耐性菌とはなんでしょうか?4コマ漫画風に説明してみます。
まず、耐性菌となる細菌はもともとは決して強いものではありません。繁殖力もなく、普段は前面に出てきて悪いことをするような奴ではありません。
ところがある日、抗菌薬が投与されて他のバイキンが死滅してしまいました。しかし、なぜかバイキン太郎君にはこの薬が効きにいのでした。
そうするとバイキン太郎君は最初は寂しいかもしれませんが、すぐにヒラメきます。
「あいつらがいなくなったなら、これからは自分の時代だ!」と。そして繁殖するようになります。
周りにライバルや敵はいないので自由気ままにやっていけます。
そして、どんどんと繁殖してその数を増やし私たちに攻撃をしかけます。
しかも、バイキン太郎君には抗菌薬は効きにくいです。
私達は抗菌薬を使うことで、抗菌薬の効かない感染症を増やしてしまっている
のです。
耐性菌は特に中途半端に抗菌薬を使用することで発生しやすいことも知られています。
抗菌薬を処方されたら適当に使用せず「処方されたものを使い切って、他の人に分け与えない」ことも大切です。
耐性菌が引き起こす問題
・耐性菌ではない普通の細菌性肺炎なら普通の抗菌薬で良くなります。
・耐性菌が原因の肺炎は普通の抗菌薬では良くなりません。
つまり、治療しても治らない状況になってしまい、多くの人の命が奪われていくのです。
厄介なことにこの問題は我々の目に見えず、問題が先送りされていくことです。
このままでは私達の子どもたち孫たちの笑顔が、耐性菌により奪われていきます。
新型コロナウイルス感染症により世界中でたくさんの貴重な命が失われました。このブログを書いている2022年9月時点で、新型コロナウイルスによる全世界の総死者数は650万人です。
しかし、今のペースで耐性菌が増え続けると
2050年には年間1000万人以上がそのために命を落とす
という有名な報告(英国2016年:オニールレポート)があります。
下の図は少しわかりにくいですが、2050年には耐性菌による死亡数が図の紫のように増加してしまい、ガンによる死亡数(年間820万人)を超えてしまうよというものです。
今でも年間70万人以上が耐性菌が原因で亡くなっていますが2050年にはガンで亡くなる人を遥かに超える死者が発生してしまうかもしれないのです。
通算ではなく【毎年 1000万人の死者】です。
新型コロナウイルス感染症は3年近くかかっても死者1000万人には達していません。耐性菌はこのままいくと新型コロナウイルス以上の問題を引き起こす可能性が高いといえます。
耐性菌問題は私たちの未来を厚い雲で覆う深刻な問題なのです。
正しい抗菌薬との付き合い方
では、私たちはこれからどのようにすればよいのでしょうか。
とても簡単な一つのルールを守れば良いと思います。
とてもシンプルです。
抗菌薬を使ってはいけないのではありません。
本当に抗菌薬が必要な患者さんにだけ抗菌薬を使う姿姿勢が大切なのです。
このルールさえ守れば耐性菌リスクは大きく減らすことができます。
千里の道も一歩からでまずは身近なところから始めていけば変わります。
耐性菌を減らすためのアクションは国をあげて・世界をあげて実施されています。
啓蒙のための組織があります。
耐性菌の問題は
AMR(AMR=薬剤耐性Antimicrobial Resistance)
と省略して呼ばれることもあります。AMR対策は重要です。皆さんもクリニックや役所などでポスターを見たことがあるかもしれませんね。
AMRに対する啓蒙活動として薬剤耐性川柳というものがあります。2022年度の金賞を載せます。
他にもたくさんの秀逸な川柳があります。深刻な問題を深刻に対応するのではなく、明るい未来にするために明るく対応していく姿勢はとても大事だと思います。
⬇AMRに対する厚労省委託機関⬇
AMR臨床リファレンスセンター https://amr.ncgm.go.jp
もし興味があったら是非チェックしてみてください。見やすいし面白いコンテンツも多くあるようです。
子どもたちの未来のためにも
抗菌薬を正しく使って
耐性菌ゼロを目指しましょう
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