でべそ(臍ヘルニア)について

クリニック

でべそは病気?

自然に治るの?

 

乳児健診などで受ける相談の一つに

でべそ
(正式には【臍ヘルニア】といいますが本ブログでは“でべそ”と表現します)

があります。放っておいても重い病気につながったり健康を害することはまずありませんので、経過観察されることも少なくありません。
しかし、本当に放置してもよいものでしょうか?

ということで、今回は でべそ について考えます。

でべそって何?

でべそは赤ちゃんの10人に1人と高い確率で発生する病気です。

10人中1人

ヘルニアという言葉を聞いたことがあると思います。ヘルニアとは体の一部があるべき場所から飛び出てしまった状態を指します。

たとえば鼠径ヘルニアというのは足の付け根(鼠径部)で腸が腹膜から飛び出してしまうものです。
椎間板ヘルニアというのは背骨と背骨の間のクッション(椎間板)が飛び出して神経を圧迫することで腰痛の原因になります。腰痛の人

[でべそ]では、腸が本来あるべきお腹の中に留まらず臍輪を通って腹壁から飛び出した状態になっています。すなわち

でべそ=臍ヘルニア

ということです。

へその緒のつながった赤ちゃん

赤ちゃんはお腹の中にいるときはへその緒でママとつながっています。へその緒には大事な血管が通っていて、ママからの栄養や免疫成分が赤ちゃんに移行します。

出産と同時にへその緒は切られますが、2週間もすると残ったへその緒も自然に取れます。
取れた直後は臍輪(さいりん)という穴が開いた状態になっていますが成長とともに閉じていきます。

ところが、臍輪が閉じるのが遅い子がいます。

閉じるのが遅いと、ヘソが外に膨らむような形になりますが、中には腸が詰まっている状態なので指で押すとぐにゅっとした感触を受けます。飛び出ても、そのまま押し込むとお腹の中に腸を押し戻せるのが臍ヘルニアの特徴といえます。
泣いたり、いきんだりすると、腹圧がかかって腸が臍輪から飛び出して大きく膨らみが目立ちます。

放置したらどうなる?

でべそは大きくなると3〜4cm程度のピンポン玉位の大きさになってしまうこともありますが、通常は放置しても健康的な被害はありません。
臍輪は大きくあいているのでヘルニア嵌頓という腸が締め付けられた状態になることはほとんどありません。

ピンポン玉

お腹の筋肉が発達していって多くは1歳〜2歳くらいまでに自然に臍輪がふさがり、でべそも治ります。

1歳までに80%、2歳までに90%が自然治癒する
(日本小児科学会HPより抜粋http://www.jsps.or.jp/archives/sick_type/heso-helnia

しかし、自然治癒するまでのあいだに時間がかかってしまったりヘルニアが大きいと、

皮膚がたるんでしまったり、小さなシコリが残ってしまう

 

ことがあります。

でべその治療

少し前までは経過観察(様子見)として自然に治るのを見守り、残った場合は手術するという形を取ることが大半でした。

また、昔は五円玉をお臍に貼り付けるという民間療法もあったようですが現在は推奨されません。金属アレルギーなど皮膚炎の原因になってしまうからです。

では、どうするのがよいのでしょうか??

現在、推奨されているのは【綿球圧迫療法】です。

綿球

写真のような綿球を臍に押し込み、透明な絆創膏で固定することで臍輪から腸が飛び出ないようにします。

そうすると臍輪という穴が広がることが減って、早くふさがってくれるようになります。欠点としてはテープで皮膚がかぶれてしまうことです。テープは毎日交換する必要はありませんが数日から1週間ごとに貼り直します。そのときに皮膚の状態もチェックしてかぶれが強ければ少しの間お休みをはさむこともあります。へその治療をする赤ちゃんイラストでべそが大きくなりすぎないうちに治療開始したほうが改善も早いと考えられます。
そうすれば自然治癒と比べてもきれいな形で治ってくれることが期待できます。

当院でもなるべく早いうちに圧迫療法を行いますが概ね1ヶ月程度で目に見えて改善をし始めて、2-3ヶ月程度で治療終了にできることが多いです。

気づいたら早めに
小さいうちに

小児科・小児外科へ相談しましょう。

ただし、ちっとも良くならない時や皮膚のかぶれが強すぎる時は無理に続ける必要はないと思います。そのような時は自然に治るのを期待してみていきましょう

※成人発症のでべそは自然に治りづらく、嵌頓してしまうことが多いので放置せずに外科にご相談ください。

 

まとめ

今回、でべそについて書いた理由は「見た目をよくする治療も大切」ということを自分なりにまとめ直したかったのもありました。

「見た目をよくする」というと自由診療で高いお金をかけて美容整形などを思い浮かべる方もいると思いますがそれはごく一部の話だと思います。

たとえば、アレルギー領域の代表疾患であるアトピー性皮膚炎は適切な治療が施されないと多くの患者さんで湿疹を繰り返してしまい苔癬化(たいせんか)といってゴワゴワで色素沈着した皮膚になってしまいます。そうして、見た目に対するコンプレックスを抱いてしまう(抱いてしまった)お子さんも見てきました。

泣いてる子のイラスト

圧迫療法は高額な自費診療ではなく保険診療です。乳幼児医療証があればその範囲で対応できます。決して危険な治療でもありません。100%治るとまでは言い切れませんが有効で試す価値のある治療です。

ハートで笑顔のイラスト

お子さんのでべそで悩んでいる方は早めに相談しましょう。

・でべそ=臍ヘルニア
・でべそは放置しても9割治る
・治らないときは手術が必要
・治っても形が悪くなることがある
・治療は綿球圧迫療法が効果的
・でべそは小さいうちに受診しましょう
2023年4月3日開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎で子どもの健康のことでお困りの方はご相談ください。
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