子どもや高齢者は注意!?
ヒトメタニューモウイルスの症状と予防策

小児科一般

昨年末に、「中国を中心にヒトメタニューモウイルスという感染症が流行している」というニュースが流れていました。

風邪

報道では「新たな流行」「中国で拡大」「呼吸器ウイルス」「肺炎を起こす」などの言葉で不安を感じたかもしれませんが、これは以前からある風邪のウイルスの一つです。

当院では1月中はそれほどでしたが、ここ数日(ブログ執筆2025年2月6日)で患者数が急増しました。(参考URL:国立感染症研究所

今回は【ヒトメタニューモウイルス】についてまとめてみました。

病気について正しく知って、正しく恐れて、適切な対応をする手助けになれば幸いです。

ヒトメタニューモウイルスとは?

あまり耳慣れないこのウイルスは、呼吸器疾患を起こして乳幼児や高齢者では肺炎に至ることもありますが、多くはただの風邪で済みます。

1. ウイルスの特徴

ヒトメタニューモウイルスhMPVhuman metapneumo virus)は、2001年に新しく発見されたウイルスです。ただし、新型コロナウイルスのように新しく生まれたのではなく、もともと存在していたものを発見したというものだと思われます。

パラミクソウイルス科というグループに属していますが、同じ仲間にはRSウイルスというウイルスがいます。RSウイルスについては以前に母体へ投与するワクチン「アブリスボ」も含めてまとめています。↓↓↓

同じグループに所属しているだけあり、ヒトメタニューモウイルスとRSウイルスの症状はとてもよく似ています。感染すると呼吸器に症状を引き起こし、特に乳幼児は免疫が万全ではないこと・気道が細いことから症状が強く出やすいことが知られています。

風邪をひいた赤ちゃん

ほとんどの人は5歳くらいまでに一度は感染するとされていますが、残念ながら長期的な免疫を得ることが出来ないため、その後も何回も罹ってしまうことがあります。

2. 感染経路

ヒトメタニューモウイルスは、

飛沫感染:咳やくしゃみで飛び散ったウイルスを吸い込む。
接触感染:ウイルスが付着した手や物を介して、目や鼻、口に触れる。

で拡がります。

感染力は強く、保育園・幼稚園や学校などでは定期的に流行が見られます。また高齢者施設などでも注意が必要とされます。

 

ヒトメタニューモウイルスの症状

軽症では⋯

発熱
だるさ

鼻水、鼻づまり
ノドの痛み

といった典型的な風邪症状が現れますが、多くの場合はそのまま数日から1〜2週間程度で自然治癒します。

重症化すると⋯

高熱が持続
ぐったり

息苦しさ
喘鳴(ゼーゼー・ヒューヒュー

といった、肺炎や気管支炎/細気管支炎などが疑われる症状が出ます。とくに乳幼児、喘息などの呼吸器疾患をお持ちの方、高齢者では重症化リスクが高いといえるので注意が必要です。

ただ、これらは多くの呼吸器感染症に共通した症状ともいえるもので、ヒトメタニューモウイルスに特徴的といえるものは何一つないです。

したがって、症状だけで「絶対にヒトメタニューモウイルスだ!」と診断をつけるのは不可能です。悩む人周囲で流行しているなどの情報があれば、多分そうだろうという見込みをつけられるかもしれませんが確定とは言い切れません。(そもそも周囲の流行が本当かどうか疑わしかったり、同時にRSウイルスやコロナが流行っていないとも限らないです。)

診断方法

症状だけで診断はできないのでコロナ同様に鼻からの綿棒検査で診断をします。(重症例では肺炎の合併を確認するために胸部レントゲン検査も行われますがウイルスの同定はできません)

  • 迅速抗原検査:ウイルスの抗原を検出する検査。
  • PCR検査:ウイルスの遺伝子を増幅して検出する検査。当院ではSpot Fire®を用いて行います。

ですが、大前提として診断確定したところで特効薬といえる薬や治療法は何もありません。

では、なんのために診断をつけるのでしょう?

乳幼児や呼吸器・循環器などの基礎疾患を持っている方でヒトメタニューモウイルスに感染していることが分かれば、呼吸状態が悪化する可能性が比較的高いので方針を立てやすい

「ただの風邪だから大丈夫」
ではなく、
「いまのところは風邪っぽいけど、悪化することもあるから高熱が続いたり、呼吸が苦しくなったらすぐに再診してください」

という説明があった方が小さなお子さんや基礎疾患のある方の場合はより安心ではないでしょうか。

逆に、軽い症状しか出ていない元気な子においては必要な検査ではありません。検査のために鼻に綿棒をつっこむのは可哀想です。大多数の方にとってはただの風邪で済む病気です。

実際に、保険診療でもヒトメタニューモウイルスの抗原検査は『6歳未満の肺炎が疑われる子どもにしか保険適応がありませんOKかNGか

これは国としても「学童以降の方や、肺炎を疑うような状況じゃなければ単なる風邪だし治療は変わらないのでムダに検査なんてしないで様子をみていきましょう」と考えているということです。

ヒトメタニューモウイルスだろうと他のどんなウイルスだろうと、周りに拡げないように咳が出ている時は飛沫防止のためにマスクを着用するなどの咳エチケットをすることが大切です。
もちろん小さなお子さんや様々な理由でマスク着用が困難なこともあると思うので、そのような場合はひどい咳が落ち着くまではできるだけ自宅療養を心がけましょう。

ヒトメタニューモウイルスの治療と予防

現在のところ、ヒトメタニューモウイルスに対する特効薬やワクチンはありません。

1. 治療は対症療法

  • 解熱剤
  • 咳止め
  • 去痰薬

もともと喘息がある方や、喘息のような症状が出ている時には気管支拡張剤などを使用することもあります。

当院では、診察での聴診所見や自宅での様子を伺いながら患者さんごとに治療を考えるようにはしていますが、実際にはどのような薬も無効なことが多く自分の免疫力で良くなるのを待つしかありません。安静

結局は安静と適切な水分・栄養補給が一番大切になります。

2.予防が大切

ヒトメタニューモウイルスの感染を予防するために特徴的なことはありません。新型コロナやインフルと同様の基本的な感染対策を徹底しましょう。

手洗い・手指消毒
うがい
咳エチケット(マスクなど)
換気

私達が、感染症に罹ることなく健康的に過ごすためには単純なこれらの作業が結局のところは最も大切です。

感染対策ピクトグラム

日本では清潔な水がいつも身近にあって、手洗いやうがいなどがしやすい環境にあることは感謝すべきことです。

まとめ

ヒトメタニューモウイルスは、年長児や大人ではただの風邪で済むことがほとんどですが、乳幼児や高齢者では肺炎や気管支炎などの重い症状を引き起こすことがあります。特効薬やワクチンはないため予防が重要です。

乳幼児においては保護者の観察眼はとても大切です。保護者の「なんかおかしい」という感覚は一番大切なサインともいえます。

最近では検査で早期診断も可能ですので、重症化のサインがあったら早めに医療機関を受診しましょう。

ただし、必ずしも全ての患者さんで検査が必要ではないことも付け加えておきます。

寒川・茅ヶ崎・藤沢・平塚で子どもの風邪、長引く咳、アレルギーのこと、そのほか健康のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。

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