「血液検査で陽性が出たけど、あまり高くないので、家で少しずつ食べてみてください。」
お子さんの血液検査等によるアレルギーチェックで、そのように言われることは少なくありません。
ただ、そうは言われても、その「少し」が、小鉢程度なのか、小さじ一杯なのか、はたまた耳かき一杯よりも少ないのか。もし症状が出たらどうすればいいのか。。。

と悩んで相談を受けることも多いです。
ある程度安全と思われるケースでは、私も「おうちで少しずつ食べてみましょう」と説明することはあります。
ただし、アナフィラキシー歴、食材、合併症の有無、住んでる地域(医療機関へのアクセス時間)、年齢、血液検査によるアレルゲン抗体価やコンポーネントの数値、いままでの食事歴などを総合的に判断して、家で食べることに危険を伴う可能性が少しでもあれば、その「少し」がどの程度の量なのかを、医療機関内でしっかりと確認した方が安全な場合もあります。
そのような場合には、当院では食物経口負荷試験を提案します。
今回は、アレルギー専門医の視点から、安全に「少しずつ食べる」を提案する食物経口負荷試験についてお話しします。
食物アレルギーのことについては、日本アレルギー学会が運営している『アレルギーポータル』も参考になりますので、興味のある方はご確認ください。
▶アレルギーポータル(食物アレルギー)
食物経口負荷試験とその目的
アレルギーが疑われる食品を実際に食べてみて、症状の有無を確認する検査です。
残念ながら、血液検査はあくまで予測に過ぎません。
食物経口負荷試験を行って実際に食べられるかを確認することが、食物アレルギーにおける唯一の確定診断方法です。

検査自体はシンプルに食べるだけなのですが、その目的は大きく4つに分けられます。
- 確定診断
▶食べた時に症状が出たが血液検査ではっきりしない時や、逆に血液検査が陽性だが前は食べていた時や未食の時などに行います。本当に除去が必要なアレルギーなのか白黒はっきりさせるために行う場合です。 - 治癒の確認
▶成長に伴いアレルギーが治ったかどうかを確認するために行います。不必要な長期間の除去を卒業することができるかもしれません。 - 摂取可能量の同定(閾値の確認)
▶「どのくらいまでなら安全に食べられるか」というハードル(閾値)を確認します。これにより、完全除去ではなく、安全な範囲での摂取が可能となります。
- 経口免疫療法の導入
▶積極的に食べることでアレルギーへの耐性を獲得させる治療(=経口免疫療法)を行うにあたり、その安全なスタートラインを決定するために行います。
③と④は似ていますが、積極的に食べる量を増やすかどうかという点で異なります。
今回のブログでは、
③摂取可能量の同定=「少し」の同定
が目的ということになります。
参照:食物アレルギー診療ガイドライン(一部改変)
「少し」ってどれくらい?
食物アレルギーの診断において、血液検査(IgE抗体価)は一つの目安に過ぎません。
たとえば卵アレルギーを疑われるお子さんの場合に、数値結果が同じ(例えばクラス3という分類)でも、問題なく食べられる子もいれば、わずか0.1グラム未満でも強い症状が出る子もいます。
血液検査の数値だけでその子にとって、危険な食材かどうかは残念ながら確実には分かりません。ましてや、どのくらいなら食べても安全かという推測は不可能です。
もし、たった0.1グラムで症状が出るお子さんがいたとしても血液検査だけでは分かりません。ママやパパが「少しずつって言ってたから、小さじ1杯くらいから試してみよう」と、ゆで卵を小さじ1杯(約3g〜4g程度)食べさせたら場合によってはアナフィラキシーなどの強い症状が出てしまいます。
他にも、祖父母宅やお友達の家などでも、「これくらいは大丈夫でしょ」という軽い気持ちで食べさせてしまうということもありえます。
安全に食べられる量を知っているかどうかは、食物アレルギーのお子さんにとっては重要な問題です。
「少し」を決めるには、食物経口負荷試験
食物経口負荷試験は、単に「食べられるかどうか」を確認するだけの検査ではありません。当院でも、「少し」=閾値を確認するため、下記のように対応しています。
- 微量からの確認
状況によって大きく異なりますが、はじめは 0.1gl単位(状況によっては0.01g単位などでも)で慎重に摂取していただき、この量までは症状が出ず安全に食べられるという安全基準値を明確にします。 - 安全な環境で実施
もし症状が出たとしても、その場ですぐに適切な処置(アドレナリン注射や、点滴・吸入など)が行える環境で行います。症状がなくても、看護師が定期的に血圧や脈拍などを定期的にチェックして、目に見えない体の変化が起きていないかも随時確認します。 - オンライン診療も活用
翌日の朝などに、帰宅後の状況をオンライン診療で確認します。食物経口負荷試験後には、帰宅後に症状が出てしまった場合の緊急連絡先をお伝えして夜間も電話対応を行っています。
食物経口負荷試験はただ食べているだけに見えますが、検査を受けるお子さんに症状が出てしまってもすぐに治療を施せるように十分な注意を払って行います。
食生活への影響
食物経口負荷試験で、具体的な量が分かれば、食事に対する考え方も大きく変わります。
「加工品のつなぎ程度なら大丈夫」
「クッキー1枚なら食べられる」

といった具合に、食べられるレシピを考える生活に変わるかもしれません。しかも、食べることでアレルゲンに慣れていくことが期待できます。
どのような食材であっても、安全に食べられる「少し」の量を見つけ出すことで、将来的に食物アレルギーから卒業できる可能性も高まります。
過去記事参照
食物経口負荷試験にかかる時間は2〜3時間と長く、その間はずっと院内に滞在しなければなりません。また、症状が出る可能性もあります。負担は少なくない検査ですが、これからの長期間の安全と食べられることへの可能性を高めるための、大切な時間だと考えてもらえれば嬉しいです。
おうちで進めるのが怖くて立ち止まっている時間は、お子様が『食べられるようになるチャンス』を逃してしまうかもしれません。早めにお近くの小児科・アレルギー科に相談しましょう。
当院では、今年4月以降にアレルギー診療の拡充を検討しており、その一環として食物経口負荷試験の実施日を増やす予定です。
寒川・茅ヶ崎・藤沢・平塚で、食物アレルギーのことや、そのほか健康のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。

