花粉症・通年性アレルギー性鼻炎
スギ花粉症シーズンも後半ですね。
私自身も花粉症なので、普段は嫌いな雨もこの時期だけは
「雨だ。今日は目の痒みマシかな」
と少しホッとしてしまうことがあります。
今回は花粉症・アレルギー性鼻炎について血液検査では分からないタイプについて考えます。
花粉症について
当クリニックは小児科だけではなく、アレルギー科も掲げているため花粉症の相談で受診される方も多いです。
すでに診断がついているという方も多く、抗アレルギー薬を希望されて来院されます。
薬を選択する時は症状に応じた効果効能だけではなく、副作用(眠気や口の乾きなど)、服用回数、剤形などの観点から総合して薬を提案させてもらっています。
また、当院では開業以来《舌下免疫療法》を推奨しています。
過去記事参照 花粉症−古くて新しい治療−
※残念ながら現在スギ花粉症治療薬《シダキュア》は全国的に不足しており、スギ花粉症の舌下免疫療法を新規に開始するのは少し先になってしまいそうです。。
舌下免疫療法はスギ花粉とダニ(ハウスダスト)による通年性アレルギー性鼻炎にしか適応がありません。そのため本当に鼻水やくしゃみの原因がスギ花粉やダニによるものかを診断する必要があります。
ちなみに日本で花粉症といえば通常はスギ花粉によるものを指しますが、スギ花粉症は日本に特徴的なものでアメリカで花粉症といえば最も多いのはブタクサによるものですし、ヨーロッパではイネ科花粉が多いといわれています。
一口に花粉症といっても原因となる花粉は環境によってそれぞれ違うのです。
いずれにしても、花粉症の診断は血液検査をすれば簡単に分かるだろうと思いませんか?
たしかに多くの場合は診断は容易です。
当院ではドロップスクリーンという検査を導入しているので、小さなお子さんでも痛みなどの負担も少なく簡単に診断できることが多いです。
参照記事 ドロップスクリーンについて
ですが、
実は診断が一筋縄ではいかず判断に悩むことも少なくありません。
ということで今回は簡単そうで奥の深い花粉症・アレルギー性鼻炎の診断について考えてみます。
アレルギー性鼻炎の診断基準
アレルギー性鼻炎の診断は次の3つのうち2つが当てはまれば確定診断となります。
教科書的な表現では
・鼻汁好酸球が陽性
・抗原特異的血清IgE抗体検査または皮膚試験が陽性
・鼻粘膜抗原誘発検査が陽性
となりますが分かりづらいので・・
②血液検査や皮膚テストで《アレルゲン反応がある》こと
③鼻の中にアレルゲンを入れてくしゃみなどが誘発されること
③は当院では実施していません。実施施設も多くはないと思いますので、実際には①と②で診断することになります。スギ花粉症の場合には②の検査でスギに反応を認めて、花粉シーズンに①を確認できれば診断となります。
ただ実際には花粉症と診断されている人の中には鼻水の検査をしたことがない人がとても多いです。鼻水の性質だけ見て「サラッとした透明な鼻水だからアレルギー」と思いがちですが、風邪の引き始めや寒暖差などでそのような鼻水が出ることも少なくありません。
そういった場合に、きちんとアレルギー反応で生じた鼻水であることを証明するために鼻水の検査(鼻汁好酸球検査)があるのです。
参考リンク:鼻汁好酸球検査の意義
とはいっても、花粉シーズンに天気のよい日に外に出たりして「くしゃみ」「目のかゆみ」があって鼻粘膜が浮腫んでいる等、明らかにアレルギー反応が起きていそうな場合には②の血液検査だけで診断として治療していくことも多いです。
とくに花粉症のように症状に季節性があると受診当日に鼻水が出ていないこともあるため、鼻水の検査が意味のないものになってしまいます。できる限り当院では鼻水の検査をしたうえで診断をつけるようにしていますが、それと同じかそれ以上にしっかりとお話を聞く(問診)ことも大切にしています。
局所アレルギー反応性鼻炎について
さて、診断に悩むケースについてですが
鼻水の検査(鼻汁好酸球検査)と血液検査などの結果がかけ離れてしまうことがあるのです。
通常は、
です。
ところが
鼻水に好酸球が出ているのに血液検査をしてもアレルゲン反応が出ないことがあるのです。
どういこうとでしょうか。
実は血液検査や皮膚検査ではアレルギー反応が確認されませんが、鼻の粘膜ではアレルギー反応を起こす局所性アレルギー性鼻炎というタイプがあること分かっています。
英語で「Local Allergic Rhinitis」と表記されるので《LAR》と略されることもあります。
このLARによる鼻炎患者さんにおいては血液検査などでは全くアレルギー反応がないのに、スギ花粉やダニなどのアレルゲンが存在する状況では鼻粘膜がアレルギー反応を引き起こし鼻水・くしゃみ・鼻詰まりが引き起こされてしまいます。
血液検査や皮膚テストだけ行われて
「アレルギー性鼻炎ではなくて風邪ですね」
と言われていた人の中にも、花粉症やアレルギー性鼻炎と同様にスギ花粉やダニなどのアレルゲンに悩まされる鼻炎の方が隠れていることがあるのです。
局所アレルギー反応性鼻炎の治療
局所アレルギー反応性鼻炎はどうしてそのような病気を引き起こすかははっきりしていません。
しかし、このタイプの鼻炎をお持ちの方は次第に進行して血液検査で反応するようなしっかりとした(というのも変な表現ですが・・)、スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎になってしまうことがあるようです。
治療としてはアレルゲンが同定できないので、舌下免疫療法は行えませんが通常の花粉症・アレルギー性鼻炎に使うような抗アレルギー薬内服やステロイド点鼻薬などは有効です。
さらに、
いま現在の症状を出さないだけではなく、アレルギーの進行を食い止めるという意味でも重要だと思います。
上述したように当院では舌下免疫療法を推奨しています。
局所アレルギー反応性鼻炎では舌下免疫療法はできませんが、まずは自分の鼻炎がどのタイプのものなのかをしっかりと診断することが望まれます。
《血液検査で反応しない》けど《花粉症・アレルギー性鼻炎のような症状》を起こす病気があることを知って頂いて、局所アレルギー反応性鼻炎が疑わしい時にはしっかりとアレルゲン回避などの環境調整もしながら進行を食い止め適切な治療を行っていただければと思います。
寒川・茅ヶ崎・藤沢・平塚でアレルギーのこと、その他お体のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。