今日は夏に流行しやすい子どもたちにとって身近な病気
手足口病
ヘルパンギーナ
についてお話しします。ブログを書いている今(2024/07/18)は流行真っ只中ですが、決して怖い病気ではありません。正しく知って健康的に過ごして下さい。
手足口病とは? ヘルパンギーナとは?
手足口病(てあしくちびょう)もヘルパンギーナも、エンテロウイルス属というグループに含まれるいくつかのウイルスによって引き起こされる病気です。
夏から秋にかけて流行する、いわゆる夏風邪の一種で7月頃にピークを迎えます。
乳幼児期の子どもたちに多く見られますが、大人も感染することがありかなり強い症状がでることもあります。大人の感染はほとんどがお子さんからもらってしまうことによります。
手足口病はその名前の通り、
手・足・口の中
に小さな水ぶくれや発疹ができるのが特徴です。手のひらや足のウラだけに発疹がとどまることもあれば、流行するウイルスの型によっては腕全体や足全体、おしりなど広範囲にポツポツが出ることもあります。
現在、流行中の手足口病は残念ながら広範囲に出現するタイプが多いようです。
一方、
ヘルパンギーナは
口の中
だけに症状がとどまります。
手足口病と似たような病気なのに名前が全然違うので分かりづらいですね。手足口病と同様の表現をするとしたら【口病】ということになりそうですが。。。そのような呼び方はされず、ヘルパンギーナ(ドイツ語で水疱を意味する「ヘルペス」+喉の痛みを意味する「アンギーナ」を足して作られた病名)という呼び方をします。
どんな症状が出るの?
- 発熱:最初に熱が出ることがあります。通常、軽度の発熱ですが、38度以上になることもあります。
- 食欲不振:口の中の水ぶくれは痛みを伴うことがあり、食事をするのが難しくなることも少なくありません
- 咽頭痛:水疱の痛み以外にも喉の奥に炎症が起こりノド全体の痛みを感じることがあります。
- 消化管症状:下痢や腹痛を訴えることもよくあります
- 発疹:手足口病の場合は手や足(主に手のひら・足の裏)に発疹ができます。
ただし、手足口病の症状の出方はウイルスの型によって傾向が異なることがあります。
2024年夏の流行はコクサッキーウイルスA6という型で、
・前腕や下腿など広範囲に大きな発疹
・爪が剥離することもある
・39度以上の高熱が出やすい
・発熱期間は短い(1〜2日間)
といった特徴があるようです。発疹もこのように広範囲でより痛々しい感じです。
ちなみに流行しているウイルス型はこちらから確認できます
→国立感染症研究所
手足口病はどうして感染するの?
手足口病やヘルパンギーナを引き起こすエンテロウイルス属(コクサッキーウイルス、エンテロウイルスなど)は、主に感染者の唾液や鼻水、便から広がります。
飛沫感染:咳やくしゃみを介してウイルスが飛び散り、他の人が吸い込むことで感染します。
糞口感染:ウイルスが含まれた便や唾液に触れた手で食べ物を食べたり、指しゃぶりをすることで感染します。
手足口病でもヘルパンギーナでも感染経路は同じで飛沫感染や糞口感染によります。手足口病の場合は発疹が目立つのでポツポツとした発疹を触ると感染してしまうと思いがちですが触れてもうつることは稀です。
赤ちゃんは指をしゃぶるし、よだれも多いし、トイレでうんちができません。そのためよだれやウンチが付着した手を介して感染しているのです。ポツポツした部分を触れてうつっているものではありません。
同じく夏に流行しやすい【水いぼ】や【とびひ】などでは患部を触れることで感染するところが大きく異なります。
予防法は?
手足口病に有効なワクチンはありません。
予防には基本的な衛生管理をしっかりと行うことが大切です。
- 手洗いの徹底:外から帰ってきたときやトイレの後、食事の前にはしっかりと手を洗いましょう。特に子どもたちには、正しい手洗い方法を教えてあげることが重要です。
- おもちゃや共用物の消毒:子どもたちが触るおもちゃや共有物は、定期的に消毒しましょう。特に保育園や幼稚園などでの共用物は要注意です。
- マスクの着用:飛沫感染を防ぐために、人が多い場所や病院ではマスクを着用するのが効果的です。とくに自分がかかっている時に周りに撒き散らさないという意味ではとても大切です。
- 体調管理:子どもが体調不良を訴えたら、無理をさせずに休ませましょう。また、家族内で体調が悪い人がいる場合は看病する人もゆっくりと休む時間を取って免疫力を下げないように心がけて下さい(実際には子どもの看病は手がかかるので難しいですが・・・)
とくに重要視したいのは手洗いです。小さな子どもたちはまだ出来ませんが、年長児や親・保育者がしっかりと手洗いをすることで多くの感染症が予防できます。
手足口病・ヘルパンギーナの効果的な治療は?
残念ながら手足口病やヘルパンギーナの特効薬や効果的な治療はありません。
治療は対症療法のみです。普通の風邪の治療と変わりませんし、抗菌薬・抗生物質も一切効きません。
実際の治療薬としては発熱や口の痛みを抑えるために解熱鎮痛剤(カロナール、アセトアミノフェン等)を使う程度です。
口の中の痛みによって十分な水分・食事が摂れなくなった場合には、点滴が必要となることもありますが多くはそのような必要はなく自然治癒します。きわめて稀に脳症やウイルス性髄膜炎などの重篤な合併症を起こすことがあるのでお子さんの様子がおかしな時は早めに受診するように目を離さずに観察してあげましょう。
手足口病やヘルパンギーナはどのくらいで治るの? 登園・登校はいつから?
手足口病の症状は通常1週間ほどで自然に治ります。
それではいつから登園・登校ができるのでしょうか?実は一律の決まりはなく患者ごとの症状を診て判断されることになります。そこで参考になるのが厚労省や小児科学会の提言です。
手足口病は治った後も比較的長い期間便の中にウイルスが排泄され、また、感染しても発病しないままウイルスを排泄している場合もあると考えられることから、発病した人だけを長期間隔離しても有効な感染対策とはなりません。(参考:厚生労働省HP;https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html)
流行の阻止を目的とした登校(園)停止は有効性が低く、またウイルス排出期間が長い ことからも現実的ではない。本人の全身状態が安定しており、発熱がなく、口腔内の水 疱・潰瘍の影響がなく普段の食事がとれる場合は登校(園)可能である。ただし、手洗 い(特に排便後)を励行する。(参考:日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会;https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20240513_yobo_kansensho.pdf)
これらの見解を踏まえて、当院では下記のような基準で登園・登校は可能と判断しています。
☑しっかりと解熱している
☑食事がいつも通り摂れる
こんな状態なら登園・登校OK
最後に
手足口病は派手な見た目ですが、適切な対応をすることで大事に至ることはほとんどありません。
まずは病気にかからないように手洗いと日々の体調管理を心がけましょう!
ニュースなどでも手足口病の流行を伝えているものは多く見かけます。流行している疾患が分かるのでより感染対策を心がけようと思える反面、不安を煽られることも少なくないと思います。
もし罹ってしまっても慌てることはありません。しっかりとお子さんの様子を見ながら水分をこまめに取ったり、解熱剤も上手に使いながら安静に過ごしてください。そして、なにか心配なことがあったらかかりつけの先生に相談しましょう。
寒川・茅ヶ崎・藤沢・平塚で子どもの風邪のこと、アレルギーのこと、他にも健康のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。