アレルギーについて①
免疫とアレルギーの関係

小児科

言葉ではよく聞くアレルギー。今回はその仕組を説明します。

免疫とアレルギー

免疫について考える時、人間の体はとてもよくできているなぁと私はいつも感心します。

細菌やウィルスなど感染症を引き起こして私達に攻撃をしかけてくる外敵・異物から身を守る

免疫

という力が私たちの体には備わっています。
免疫は攻撃をしかけてくる異物は排除しようとするけれど、食べ物や無害な異物には攻撃をしないような緻密な設計がなされています。

私達の体は、バイキンやウイルスが入って体調を崩すと

咳、くしゃみ・鼻水
高熱
下痢や嘔吐

といった症状が出るように出来ています。

実はこれらの一見困った症状はバイキンやウイルスをやっつけるために必要な反応なのです。

免疫の漫画イラスト

どういうことかというと・・

やくしゃみ・鼻水で追い出す
高い熱を出して弱らせる
下痢や嘔吐で体の外に排出

といった具合に良い効果を発揮していることの裏返しが様々な症状として現れているのです。
感染症のときに症状を無理やり止めることは良くない場合もあります。私達小児科医はお子さんの状態を診て、症状を抑えるべきかそれともツライのは分かるけど病気を早く良くするために薬を使わずに様子を診るべきかなどを判断しています。
必要に応じてお薬を使いましょう。

免疫は赤ちゃんのうちはとても未熟です。
けれど、母親から【へその緒】を通して受け取った免疫力でバイキンと戦っているのです。

余談ですが・・・生後4ヶ月頃になると母親からの免疫力は弱まります。でも、予防接種(ワクチン)をしっかりと受けておけば特に怖いバイキンやウイルスから赤ちゃんの体を守ってあげることができます。

免疫力は親から子への大切なプレゼントです。

生まれる時はへその緒から、生まれた後は予防接種
で免疫力をプレゼントしましょう。

お腹の中にいるのイラスト

二ヶ月になったらワクチンデビューを忘れずに!

 

この免疫の働きが、過剰に働いてしまい本来無害なはずの花粉やダニ、卵や牛乳やナッツなど食べ物に対しても排除しようと勘違いをおこしてしまうことがあります。発疹、呼吸困難などの症状を起こしてしまう状態が

「アレルギー」

です。アレルギーと体を守る免疫反応は表裏一体のような存在です。

【免疫反応】
体に入ってきたら困る異物(細菌やウイルスなど)を適切に排除してくれる体にとってなくてはならないもの

免疫反応の模式イラスト

に対して、

【アレルギー反応】
体に入ってきても悪さをしない無害な異物(アレルゲン:ダニやスギ、それから卵などの食べ物など)を排除しようとして過剰に反応する厄介なもの

アレルギー反応の模式イラスト

ということになります。

免疫反応=正当防衛
アレルギー反応=過剰防衛や誤認逮捕

といった感じでしょうか。

アレルギーマーチ

アレルギー疾患は

気管支喘息
アトピー性皮膚炎
食物アレルギー
花粉症・アレルギー性鼻炎
アレルギー性結膜炎

その他にも、抗生物質や造影剤などの薬や昆虫(ハチなど)のアレルギーなど多種多様な疾患が含まれます。

アレルギー体質の人が成長するにつれて、これらの様々な症状が出たり悪化して悩まされることを、アレルギーが行進(マーチ)していくということで

アレルギーマーチ

と呼びます。1998年に同愛会記念病院小児科の馬場實先生が提唱しました。

アレルギーマーチのイラスト

出典 独立行政法人環境再生保全機構https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/sukoyaka/43/feature/feature02.html

小児アレルギー科医はこの【アレルギーマーチ】の進行を少しでも食い止め、症状を抑えて健康的に過ごせるようにプランを立てることが最も重要な役割だと思います。

どのように食い止めるかは患者さんの背景によって変えるべきだと思います。信頼できるアレルギーかかりつけ医を見つけましょう。
アレルギー専門医は下記サイトから探すことができます。アレルギーでお悩みの方は是非。
https://www.jsaweb.jp/modules/specialist/index.php?content_id=6

 

アレルゲンについて

アレルギーを引き起こすものをアレルゲンと呼びます。

アレルゲンは抗原と呼ばれることもあります。
例えば食物アレルゲンのことを食物抗原、吸い込むアレルゲンのことを吸入抗原など。

ただし抗原という言葉は免疫反応におけるバイキンやウイルスのことも指すので少しややこしいですね。

「外から体に侵入してきて症状を引き起こす異物=抗原」
「感染症の場合には 抗原=病原性微生物」
「アレルギーの場合には 抗原=アレルゲン」

と考えてください。

最近では新型コロナウイルスの検査でも、抗原検査という言葉を聞いたことがある方もいると思います。これはコロナウイルスという異物=抗原を検査しているのです。

アレルゲンは原則としてタンパク質です。
脂肪分や糖類・炭水化物などは(きわめて特殊なタイプを除いて)アレルギーを起こしません。食物5大栄養素

タンパク質は様々な物質に含まれています。そのタンパク質の中でもアレルギーを引き起こしやすいと分かっているものがいくつかあります。

アレルゲン(抗原)はタンパク質
吸い込む(吸入抗原)
ダニ、スギ花粉、カビ、ネコ・・・
食べる(食物抗原)
卵、牛乳、小麦、くるみ、落花生・・・

などが代表的です。ここに挙げたのはごく一部です。他にも数え切れない様々なアレルゲンがあります。

長くなったので後編に続きます。

 

2023年春開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎でアレルギーにお困りの方はご相談ください。

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