食物アレルギー①
食物アレルギー対策は安全性の確保から

小児科

食物アレルギーの歴史

チーズの写真

「ある男がチーズを食べた後にとても苦しんだ」

今から2500年も前に医学の父と呼ばれるヒポクラテスは牛乳アレルギーを示唆する言葉を残しています。

アレルギーは大昔から人々を悩ませてきたみたいで、食物アレルギーではありませんが今から4000年以上昔にエジプトのメネス王がハチに刺されて死亡したというアナフィラキシーと思わせるような記載(象形文字)があるそうです。エジプトのイラスト

しかし、食物アレルギーに対する医学が進展するのにはそれから何千年もの時が必要でした。
1902年にアナフィラキシー反応についての論文が出され、1906年にアレルギーという言葉が作られました。ちなみにアレルギーと言う言葉は造語でギリシャ語のallos(変わる)+ergo(作用)という言葉を組み合わせて作られています。体から外敵を追い出すための免疫の力が変わってしまい有害な作用を引き起こすことから名付けられたようです。

 

アレルギーはとても身近な病気です

私は初期研修を終えて小児科に進みましたが、アレルギーで困っている子が本当に多くて驚いたことを覚えています。かくいう自分自身も赤ちゃんの頃にはアトピー性皮膚炎で母親を悩ませていたそうです。アトピー性皮膚炎、気管支喘息、食物アレルギー、鼻炎・花粉症などなど・・アレルギーは子どもにとっては最も身近な慢性疾患だと思います。

とくに食物アレルギーは軽い症状から命に関わるような強い症状まで多彩です。
同じ患者さんでもアレルゲンの摂取量によって症状の出方が変わります。
症状は具体的には、、
皮膚の症状 (写真のように赤く腫れて痒くなる蕁麻疹が代表的)
のかゆみや充血、鼻水くしゃみといった花粉症のような症状
・咳やゼーゼーするといった呼吸器の症状
・嘔吐や下痢、腹痛などの腹部症状
と様々です。
蕁麻疹の写真
そして、アナフィラキシーといってこれらの症状がいくつも同時に進行して苦しくなったり、血圧が下がってぐったりしてしまい、時には命を落とすことすらある怖い症状が出ることもあります。

アレルギー疾患は身近な病気ですがこのように重い症状を引き起こすことがあり放置してよい病気ではありません。

食物アレルギーの特殊な事情

私は、食物アレルギーは他の病気と全く違う特徴があると考えています。
その特殊性はどのようなことでしょうか??

↓↓↓

残念ながらアレルギーは根本的に治すことが難しい病気です。
風邪のように数日間だけ悪くなって、すぐに完治するようなものではありません。

普通は根本的に治すことのできない慢性的な病気というものは(病気の種類にもよりますが・・)、治療をしなければ健康に長生きすることは難しいかもしれません。

普段から治療を受けたり検査をする必要があると言えます。

では、食物アレルギーはどうでしょうか?
うちの子はクルミアレルギーを持っています。クルミの入ったお菓子や料理を食べると蕁麻疹が出たり呼吸苦が出てしまいますが、普段は全く問題なく元気いっぱいに過ごしています。
クルミさえ口にしなければ病気とは分かりませんし、もし一生クルミを食べる機会がなければ病気と気づかないまま年をとっていくことでしょう。

前置きが長くなりましたが、

つまり食物アレルギーは

「アレルゲンとなる食材を食べなければその病気を気にすることなく」

生活することができるという特殊な病気といえるのです。

こどもが広場で両手を広げて立ってる写真

アレルゲンと触れなければ元気に過ごせる     
それがアレルギーと他の病気との大きな違いです。

少し話が変わりますが、先日ディーンフジオカがTVで「花粉症が辛かったから海外に移住した」と言っていました。スギ花粉症は日本に特有ともいえる病気なので「アレルゲンからの回避」という点では確実に有効です。とは言っても花粉症のためだけに海外に引っ越すというのは現実的ではありませんが。。

つまり、アレルゲンを体に入れないことが最も重要なのです。基本はそこです。

しかし、残念ながら食物アレルギーには誤食という悩ましい問題もあります。
食物アレルギーは最近では食べて治すことを目指すことも少なくありません。
私自身も適切に食べることで食べられる量が増える=治っていくことは理想的で望ましいと考えてます。このように食べて治すことを経口免疫療法といいます。
他にも舌下免疫療法や皮下免疫療法といってスギやダニのエキス剤を舐めて根本的に花粉症やダニによる通年性鼻炎を治す治療もあります。

アレルゲンを体内に取り込んで治していく免疫療法は今後さらに発展すべき治療法だと思います。

しかし、 、、

アレルギー診療の基本

私はアレルギー専門医としてアレルギーの患者さんを診るときの大原則は

【原因となるアレルゲンからの回避】

であると思っています。

まずは、そこをスタートにして目の前の患者さんにあった方針を建てるべきだと思っています。

アレルゲンからの回避策の見直しや確認を行うこと、つまり安全性の確保が最優先です。免疫療法を含めた治療方針の決定はそれからゆっくりと考えることだと思います。

精確な診断をして、
原因となるアレルゲンからの回避を徹底したうえで
その子に合った個別の対策を考える。

患者さんというのは病気を持ったロボットではありません。一人ひとりの背景は全く異なります。

あの子に良い治療はうちの子にも良い治療とは限らないのはアレルギー疾患の難しいところといえますが、食物アレルギーはその最たるものといえます。皆さん、置かれている状況は違います。

 

食物アレルギーでお困りの方は、ぜひともアレルギー診療に精通したアレルギー専門医に相談していただきたいと思います。アレルギーかかりつけ医を作りましょう。

医者と子どもが手を重ねてる写真

食物アレルギーの診断や具体的な治療法などまだまだお伝えしたいことはたくさんあります。
また定期的にブログで発信したいと思います。 

 

2023年春開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
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