今回は風邪と抗菌薬について
前回の記事はこちらから
▶https://samukawa-kodomo.jp/blog/2022/09/09/風邪について①/
風邪をひいたら抗菌薬(抗生剤・抗生物質)を処方されるものだと思っている方もいるのではないでしょうか。
はたして、、
風邪に処方される抗菌薬
本当に正しいのでしょうか?
今回はそこにフォーカスを当てて書いていきます。
抗菌薬とは
抗菌薬とは文字通り細菌に対抗する薬です。
抗菌薬は抗生剤・抗生物質と呼ばれることもあります。これらは厳密に言うと違うもので、抗生剤は抗菌薬のうち微生物から作られるものだけを指します(↔人工抗菌薬は人工的に作成)
ただし、あえて別に考える必要もないので今回のブログでは、
抗菌薬(抗菌剤)=抗生剤(抗生物質)
として扱っていきます。
抗菌薬は作用機序によって殺菌性と静菌性に分けられます。
抗生剤には他にも細かい特徴があり、医者が処方するときにはターゲットとする細菌や臓器によって使い分けています。細菌感染だからといって抗菌薬を使えば何でも良くなるわけではありません。
どの敵(細菌やウイルス)にどの攻撃(治療)が効くのか?
ちゃんと考えて診療していますのでご安心を。
抗菌薬は風邪には効かない?
結論からいうと
ほぼ無効
です。
風邪の原因はウイルスであり抗菌薬は無効だと言い切って良いのですが溶連菌など特殊なこともあるため “ほぼ” と書きました。
「風邪の9割はウイルス、残りは細菌」とはいっても抗菌薬を投与しなくても治ることがほとんどです。
肺炎で知られるマイコプラズマも風邪の原因になることもありますが、ノドや鼻だけで症状がとどまっていて肺炎などを合併していなければ抗菌薬は不要で自然に治ります。
例外として溶連菌による咽頭炎だけはペニシリンなどの抗菌薬が必要です。これについては特殊な事情があるのです。
正式にはA型溶血性連鎖球菌といいます。略して溶連菌と呼びます。
溶連菌による咽頭炎(ノドの風邪)は放っておいても3-4日くらいで症状は落ち着いて7日以内には完治します。それでは、なぜ抗菌薬が必要なのでしょうか?
①耳馴染みない病名かもしれませんが、溶連菌に対する過剰な免疫反応からくる症状で心臓など大切な臓器に悪影響を及ぼすことがあります。最近では溶連菌に対して適切に抗菌薬で治療されるので年間数例の発症にとどまります。
②扁桃周囲膿瘍・頸部リンパ節炎など周囲への広がりが起こることがあります。これらの重篤な合併症を抗菌薬を使うことで予防できます。ただし、溶連菌以外のウイルスによる風邪(咽頭炎)については全く効果がありません。
③溶連菌に対して抗菌薬を使うと平均して1日は症状が早く良くなると言われています。菌がより早く退治できるということです。溶連菌は新型コロナのように飛沫感染で周りに拡がってしまいます。適切な抗菌薬投与で周りのお友達へ拡がるのを予防できます。ただし、連菌以外の風邪では抗菌薬を使っても感染拡大を予防することはできません。
抗菌薬は前述したように
ことが目的です。ウイルスを退治することと抗菌薬は全く関係がありません。
よく効くかな?あまり効かないかな?とかいうレベルではなく
ウイルスに抗菌薬は
全く効きません
ターゲットにしているものが全く違うのだから当然なのです。私達、医師はそれを分かっているにも関わらず、つい「念のため出しておきましょうね」という言葉を免罪符にして風邪にも気軽に抗菌薬が出され続けていました。
今はそのような状況だったことを世界規模で反省して不要な抗菌薬使用を避けなければいけない時代です。
それにしても、なぜ抗菌薬を適切に使わなければいけないのか?
寒川・茅ヶ崎で子どもの健康のことでお困りの方はご相談ください。