花粉症−古くて新しい治療−
舌下免疫療法(SLIT)は子どもの花粉症にもオススメ

アレルギー科

スギ花粉症は国民病?

今回は増加の一途をたどるスギ花粉症について書いていきます。
自分自身も高校生の頃からスギ花粉症に悩まされてきました。

マスクをしたパンダ

花粉症について一緒に考えてみましょう。

日本人とスギ花粉症

花粉症はアレルギー疾患の中でも最も身近な疾患と言えます。
それでは実際に花粉症の有病率はどの程度でしょうか?

① 5%
② 20%
③ 40%

・・

・・・

正解は③です。2019年の報告で日本における花粉症の患者さんは人口の42.5%(環境省:花粉症環境保険マニュアル2022)でした。その大半はスギ花粉によるもので人口の38.8%を占めます。日本の人口はおよそ1億2500万人(総務省HP)なのギ花粉症患者だけで4800万人以上が花粉症に悩まされているという計算です。

国民の2人に1人が何らかのアレルギー
国民の3人に1人以上がスギ花粉症

という時代です。このデータを見るとはじめに書いたようにアレルギーは国民病といっても全く過言ではないでしょう。

そもそもスギ花粉症が日本でこれだけ増えてしまったのは戦後の植林計画が発端と言われています。過渡の伐採で荒れ果てた森林を元気な姿に取り戻すために、成長が早くてまっすぐ育ちやすく様々な用途に加工しやすかったのでスギが好んで植えられたようです。
その恩恵を私達はたくさん受けてきましたが、まさか植林している時には何千万人ものアレルギー患者が発生するとは思いもしなかったことでしょう。

切り倒された木の写真

現在では森林の約4割が人工林で、その約4割がスギ人工林となっています。花粉症による問題が顕在化してきたことから、林野庁では平成3年に少花粉スギの開発に着手し、平成8年には最初の少花粉スギを開発。現在までに、少花粉スギは142品種、無花粉スギも3品種開発されています。 (林野庁HPより抜粋)

このような対策により、将来スギ花粉の量は減るかもしれませんが残念ながらまだまだ遠い未来の話になりそうです。

困り顔のパンダ

花粉症対策

それでは今まさに花粉症でお悩みの方はどうすればよいでしょうか?

①沖縄や海外などのスギ花粉が飛んでない地域に引っ越す
前回の食物アレルギーのブログでも書きましたがアレルゲンがない地域に行けば解決します。根本的解決かもしれませんが一番ハードルが高いと思います。。

無視して過ごす
花粉症が直接的に命を危険にさらすことはありません。鼻水が出ようが、くしゃみが止まらなかろうが、鼻詰まりで眠れなかろうが気にせず過ごすのも一つの手ですが、生活の質(QOL:Quolity Of Life)を大きく下げてしまいます。副鼻腔炎(蓄膿)のリスクも高いといえます。

抗ヒスタミン薬などの一般的治療
今では眠気など副作用の少ないものや様々な良い特徴を持った抗アレルギー薬が出ています。選択肢も多く組み合わせによっては点鼻のステロイドや漢方薬なども選択肢となります。

生物学的製剤
ゾレアという生物学的製剤もしくは分子標的薬などと分類される特殊な薬が数年前から花粉症にも使えるようになりました。副作用は少なく、更にとても良く効きますが・・・適応が限られる(血液検査値、症状の強さ、年齢、治療歴など)こと、注射なので痛みを伴うこと、高額であることなどのデメリットもあります。

⑤免疫療法
今回のメインのお話です。スギ花粉成分が入ったお薬を用いてスギ花粉に対して体が慣れていき症状が出にくくなるという治療です。アレルゲンに対して免疫学的な手段で根本的に治そうとする方法です。

皮下免疫療法と舌下免疫療法のイラスト

図は鳥居薬品のHPからのものです。
このように免疫療法には皮下免疫療法と舌下免疫療法があります。

 

古くて新しい治療法

突然ですが、この漆塗りの食器の写真は免疫療法の歴史と関係があります。どういったことでしょうか。

↓↓↓

漆塗りのお椀

実は、漆塗り職人に伝わる技法の中にアレルゲン免疫療法/舌下免疫療法そのものと言える考え方があります。
漆塗り職人さんは古くからアレルギー(もちろん当時はそのような言葉も概念もありませんでした)を起こしにくくするために、舌の裏側に少量の漆を置いて少しずつ量を増やしていくことを慣習的に行なっていたそうです。科学的な根拠がないなかで経験でこのようなことを行っていたのは驚きですね。

治療として行われるようになった免疫療法の歴史は古くて、注射による皮下免疫療法の始まりは1911年であり今から100年以上も前から行われています。最初はアメリカでイネ科花粉に対して行われ、その後様々なアレルゲンに対して行われていますが残念ながらスギ花粉に対しての効果は不十分だったようです。(治療に使われるエキス薬がイマイチだった?)
しかも皮下免疫療法は注射なので痛みを伴ったり、アナフィラキシーを起こしやすかったりという難点もありました。

2014年に日本でシダトレンという舌下免疫療法の薬が発売されました

皮下免疫療法と違い、痛みを伴わず危険性も極めて低く、治療成績もよく、お値段もお手頃という理想的なお薬でした。シダトレンというのは液体だったのですが管理が手間だったのですが、2017年には改良されて錠剤のシダキュアというお薬に置き換わりました。シダキュアは毎日1回使用します。(おおよそ3年〜5年くらい続けます)1分間舌の下で保持してから飲み込んでそれから5分間は飲んだりうがいしたりを避けるというものなのでご自宅で手軽に実施できます。手軽にできるにもかかわらずスギ花粉症への効果は抜群でこの治療を開始することで他の抗アレルギー薬などが不要と仰る患者さんはたくさんいます。早ければ治療開始した次の年の最初の花粉シーズンには効果が現れます。

実際に何十人か治療してきましたが手応えは大きいです。

花粉症は「たかが花粉症」と思われがちですが、症状がピークのときには眠れない・ティッシュが手放せない・外出したくないなど生活の質を大きく下げてしまう病気です。とくに学童のお子さんは授業に集中できず学力に悪影響を及ぼしたり、大人も仕事中や運転中の眠気など危険なこともあります。たかが花粉症、されど治療はしっかりと行いましょう。

いつから始める?花粉症治療

花粉症の治療は1月や2月から始めるのではありません。

今まで述べたようにスギ花粉症に対する舌下免疫療法は極めて有効です。

しかし、はじめて治療を開始する時期は決まっています

スギ花粉が飛散を始める時期(1〜4月)には始めることができません。(症状が出ている時期に開始すると口のかゆみなどの副作用が出やすいので)

それでは具体的に何月頃から花粉症の舌下免疫療法を開始すればよいのでしょうか?家族の写真と舌下免疫療法をすすめるコメント

ついつい症状がなくなると後回しにしてしまいがちな方も少なくないと思います。
「鉄は熱いうちに打て」という言葉がありますが、ツラかった花粉症への思いがあるうちに治療を開始したほうがよいと思います。

つまり、スギ花粉症の理想的な治療は花粉シーズンの直後から始まります。
私は個人的にはGW明けを推奨しています。

なお、舌下免疫療法は花粉症以外にダニアレルギーによる通年性鼻炎にも行われますが、そちらの方は一年を通じていつでも開始できます。

親子で治そう花粉症

 

親子でこの治療をすると親は子どもの手前忘れにくくなりますし、子どもも親が一緒なら忘れにくいので個人的には家族で花粉症の方が複数人いたらぜひ一緒に治療することを推奨します!

小さなお子さんにも有効ですが1分間薬を口に留めなければいけないので原則5歳以上が対象とされていますが4歳だからやってはいけない治療というわけではありません。4歳半くらいで導入できる子もたまにいますが5〜6歳くらいになるとうまくできる子が増える印象です。

すでに症状が出ていて困っている方はまずはご相談ください。

当院では

親子で花粉症の舌下免疫療法

を受けることができます。ダニアレルギーによる通年性鼻炎に対する舌下免疫療法についても実施可能です。同時治療もできます(一度になめてはいけませんがタイミングをずらして使用すればほとんど負担は変わりません)

 

寒川・茅ヶ崎で花粉症にお悩みの方、舌下免疫療法について詳しく聞きたい方はぜひご相談ください。アレルギー専門医として適切な診断と高度な治療を行います。

※当院はガイドラインに沿った保険診療を行っています。
もちろん花粉症に対しての診断や治療もすべて保険診療です。
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