乾燥してお肌カサカサ
早いものでもう12月です。空気が乾燥しはじめて、お肌がカサカサしてピリピリしたり痒くなって困っている方も多いのではないでしょうか。
今回はこの季節に気をつけたい 子どものスキンケアについて書いていきます。子どものお肌にはいくつか大人と違う特徴がありますが、対策自体は大人も子どももほとんど変わりません。保護者の方も是非参考にしてください。
子どもの皮膚の特徴
そもそも皮膚は子どもと大人でどのような違いがあるのでしょうか。
実は大人も子ども皮膚の役割自体は変わりません。
皮膚は様々な刺激(バイキンやウイルスなどの微生物、熱や紫外線に摩擦などの物理的刺激など)から体を守ってくれたり、体から出る水分量を調整してくれます。汗をかくことで体温調整もしています。五感のうちの触覚に必要なセンサーの役割も果たします。
このように皮膚は多くの役目を担う大事な組織です。
私たち人間が地上で生活していくためにこれらの機能は欠かせません。
それでは子どもたちの皮膚にはどのような特徴あるのでしょうか。
子どもと大人の肌で違うことは主に2つ
まずお肌(表皮)の薄さですが、
赤ちゃんの肌は角層の細胞自体が小さく未発達な影響もあり、大人の約2/3程度の薄さしかないと言われています。さらに細胞の隙間を埋める細胞間脂質が少ないため乾燥しやすいのが特徴です。
※細胞間脂質とはセラミド、コレステロールなどで構成された「セメント」のようなもので細胞同士が手をつなぎ合わせて水分蒸発を防ぐ役割を持っています。残念ながらセラミドを補充する処方薬はありません。処方はできませんが市販品でいくつかの製品が出ているようなので、処方される保湿剤などで保湿の効果が十分に実感できない方は試してみるのもいいかもしれません。
そして、もう一つの特徴が
ホルモン分泌の影響で皮脂の量が少ない
ことです。
皮膚の表面は皮脂による薄い膜を作ることで外部からの物質の侵入を防ぎ、水分の蒸発を抑え、保湿する大事な作用があります。また抗菌ペプチド産生にも皮脂は一役かっています。
このように子どもの皮膚の特徴である
薄い・皮脂が少ない
ということは皮膚のバリア機能が弱く、乾燥しやすいことに直結します。
ひとことで書くと結局、、、
ということになります。
子どもの肌が弱いなんてことはよく言われることですが、こういった理由があったのです。
だからこそ、子どもたち(赤ちゃん)はスキンケアが大切なのです。
よくこんな質問を受けます。
よくなったらやめていい?
一生塗り続けるの?
小学校に上がるまで?
20歳になるまで?
実を言うと、はっきりした正解はありません。体質によっても異なるので確実な答えが出せないのです。
ですが、ある程度の目安がないと治療を続けるモチベーションも湧きづらいものです。
私は一つの目安として
ニキビができる頃
までを目標にして、スキンケアを頑張ることをひとまずオススメしています。
なぜかというと、ニキビは皮脂が増えると出てくるからです。ニキビはアクネ菌というバイ菌によって引き起こされますがこのアクネ菌は皮脂が好物なのです。
皮脂過剰 → ニキビ
ということで、私はニキビができる思春期(二次成長期)まで保湿を続ける事を一つの目安にしています。
(あくまで目安なので、主治医の先生と相談しましょう)
アトピー性皮膚炎と乾燥肌の関係
アトピー性皮膚炎と乾燥肌には深い関係があります。
アトピー性皮膚炎では慢性的に皮膚が荒れてバリア機能が弱くなっているため、皮膚に潤いを与えるはずの水分が簡単に蒸発してしまうので、アトピー性皮膚炎の患者さんは乾燥肌になりやすいのです。
そして肌は乾燥することで更に敏感になり痒くなってしまいます。痒くなって掻き崩すと皮膚表面は荒れてしまいバリア機能も低下して水分が抜けていき更に乾燥が強くなります。このような悪循環を起こしてしまいます。
先ほど書いたように、子どもたちのお肌はもともと薄い上に皮脂も少ないため乾燥肌になりやすいです。
アトピー性皮膚炎の子どもたちではバリア機能が更に弱いので、乾燥肌のケアは極めて重要な課題となります。
アトピー性皮膚炎についてはまた近いうちにブログで発信できればと思いますが、明らかにアトピー性皮膚炎だろうというような子であっても診断が先延ばしになっていて、そのせいか治療も中途半端にされているような気がします。
喘息についてや、食物アレルギーについても書きましたがアレルギー疾患における「診断」の役割はとても大きいはずなのに残念です。
長引く湿疹で悩んでる方は放置せずに、皮膚科もしくは小児科(とくにアレルギーに精通した)に相談しましょう。完治は難しくても、良い状態をキープすることがお肌を含めてアレルギー管理には重要です。
※長引く湿疹とは、ずっと悪い状態ではなく「良くなったり悪くなったりを繰り返すもの」も含みます。
秋冬生まれと食物アレルギー
食物アレルギーのブログでも書きましたが、食物アレルギー発症リスクの中に
「秋冬生まれ」
というものがあります。
なぜ、秋から冬に生まれると食物アレルギーのリスクがあがってしまうのでしょうか?
それは・・・
寒い、
乾燥する、
日光照射が少ない
ことが大きな原因だと考えられます。
寒いとか乾燥するとかは何となく分かりやすい理由ですが日光はどう影響するのでしょう?
実は、日光はビタミンDの合成に大事な役割を果たします。
しかし、日光浴(外気浴)もやりすぎると紫外線の悪影響が出てしまいます。まずは数分〜10分程度からはじめるとよいでしょう。子育て中のママやパパの気分転換にも外気浴は大切だと思います。
もともとお肌の弱くなりがちな赤ちゃんたちは
と、生まれてすぐに肌に悪いことが起きやすい冬の時期を経験することは肌にとってはストレスになってしまうのでしょう。
ただし、
秋冬に産まれた子が全員アレルギーになりやすいわけでもありません!!
秋冬に産まれたらより一層スキンケア(とくに乾燥対策)に気をつけようというだけです。
春や夏に産まれたら、脱水や汗対策が必要ですし環境によって虫対策なども必要です。赤ちゃんが罹ると苦しくなりやすいRSウイルスという風邪のウイルスも今では7月が最流行期になっています。
子どもの産まれた季節は春夏秋冬いつだろうが、親からしてみたら大好きな季節になると思います。その時期その時期の注意点があるだけなのでガイドラインに書いてあることを見て気にする必要はありません。
しっかりと対策をしておけば大丈夫です!
具体的な対策は
スキンケア・湿疹早期治療です。湿疹早期治療については改めて時間を見つけて書きたいと思います。
最後にスキンケアについてもう少しだけ補足です。
保湿剤の種類
スキンケアの基本は
清潔・保湿・保護(紫外線対策含む)
です。
以前のブログでも少し書きましたが、
経皮感作によるアレルギー進行を防ぐためにもスキンケアは重要と書きました。
しかし食物アレルギーなどアレルギーの進行を防ぐ目的以外にも快適な生活・質の良い睡眠・見た目の問題など皮膚自体の症状を改善することのメリットは極めて大きいものです。
冬場はとくに乾燥からくる肌荒れが問題になるので徹底した保湿・保護を心がけましょう。
まず、保湿剤・保護剤としてよく使われるものとして
他に亜鉛華軟膏やアズノール軟膏なども保護作用はしっかりしていますが今回は省略します。
①白色ワセリン
お肌の表面に油の膜を張って、物理的にお肌を様々な刺激から守ってくれる、まさしく保護剤です。ワセリン自体に体に入り込んで何かをするという薬効成分はないことがポイントで安心して全身に使用できます。何回塗っても体に害はないので気になるときはちょこちょこ塗ってお肌を守ることができます。
欠点としては べたつくこと 保湿効果がやや弱い こと。
②ヘパリン類似物質含有剤
水を保持する性質を持った「ヘパリン類似物質」を含んだ塗り薬です。水を保持=保湿効果を持っています。油性クリーム・クリーム・ローション・スプレー・フォーム(泡)など様々な形で処方されます。それぞれ使用感が異なるので季節や時間帯によって使い分けるとよいでしょう。
欠点も特にありませんが、ごく稀に体質にあわず塗ることで逆に赤くなったり痒くなることがあります。その場合は中止して処方医師に相談しましょう。
③尿素製剤
ヘパリン類似物質含有剤と同様にお肌の角質内に水を保持する効果がありますが、尿素製剤はさらに角質融解作用があるので乾燥・湿疹で荒れて固くなったお肌を柔らかくして保湿するイメージになります。大人のカカトや肘など固くなって乾燥したところにはとても良い選択だと思います。
欠点としては刺激が強いことと独特の匂いがすることですが、最近の製剤は刺激が抑えられ・匂いも気にならなくなっています。
冬場は乾燥肌をベースにした肌荒れが多い時期なので保湿・保護をしっかりと行う必要があります。そのためベタつきが強くても保護効果の強い塗り薬を使用しましょう。
お出かけ前などでベタつくのが困る場合は、
といった使い方はどうでしょうか。生活スタイルに合わせた治療方針の決定が大切です。
このブログはちょうどカタールワールドカップ2022で日本がスペインを撃破して予選突破した日に書いています。ドイツ戦に引き続き、逆転劇で本当に感動しました。
サッカーでも相手に合わせてフォーメーションやメンバーなど戦略を替えていますが、アレルギー疾患もその子の置かれている背景によって治療戦略は替えなければいけません。
信頼できるかかりつけ医と相談して、
お肌を元気に保ちましょう!!
2023年春開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎でアレルギーにお困りの方はご相談ください。