いつかあなたも??
〇〇食アレルギー

虫取りしている子どもたち アレルギー科

最近、とあるニュースを見て気になったことがありました。以前に経験した興味深い食物アレルギーの患者さんについて書いていきます。

食物アレルギーを起こす食材

食物アレルギーを起こす食材ランキングは年齢によっても変わりますが、最新の報告では

1位 鶏卵
2位 牛乳
3位 ナッツ類
4位 小麦
5位 ピーナッツ

となっています。令和三年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書

表彰台に猫が立っているイラスト

ちなみに、前回調査(平性29年)までは

1位 鶏卵
2位 牛乳
3位 小麦

がゆるぎないトップスリーだったのが、最新の調査で小麦が3位から陥落しました。パンのイラスト

代わりにナッツ類が3位になっているのは注目すべき点だと考えます。グラフを見ると小麦アレルギーの患者が減少傾向だったのもありますが、ナッツ類アレルギーの患者(グラフ赤線)が急増しています。グラフ1

私の娘もナッツ類のアレルギーがあるため、より身近に感じることができますが、それを差し引いても診察していて明らかにナッツ類アレルギーとくにクルミとカシューナッツのアレルギーが増加している印象がありますが報告もその印象を裏付けるものでした。

グラフ2

(出典:同上 令和三年度食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業報告書

ナッツアレルギーの補足

私の経験上は

「赤ちゃんのときに卵アレルギーとして相談を受けました。負荷試験などで適切に評価・食事指導をすることで2歳くらいに卵が食べられるようになり解除できた!ばんざい!!となったのに、血液検査でナッツ類に反応があって・・・さてどうしよう?」

困っている親子

という流れが多かったです。

そうならないために、初診時から卵などのその時点で判明している食材以外の食事指導も行うのですが、どうしても慎重になってしまうこともありピーナッツやナッツ類は開始が遅くなってしまいがちです。日本アレルギー学会では以前から乳児期の早めにピーナッツの摂取開始を推奨していますが、なかなか日本の食文化には馴染みません。ピーナッツアレルギー発症予防に関するコンセンサスステートメント

〇〇食アレルギー

前置きが長くなりましたが、今日の本題です。

私が見たとあるニュースはなんだったでしょうか?

ニュースを読むモグラのイラスト

2年ほど前にこんな患者さんがいました。(個人情報に関わることもあるので一部修正・脚色しています)鉛筆のラインイラスト高校2年生。昼休みに蕁麻疹と呼吸苦が出て受診しました。
その日は食物アレルギーによる症状だろうと診断されて後日専門外来で相談を受けました。症状が出た当日の昼食は普段と変わったものはありませんでした。体調も良かったのですが、一点だけいつもと違うことがありました。

それは・・・

虫のスナック

これを昼休みに友人と食べていたというのです。

私が以前勤めていた病院の最寄り駅(大船駅)には全国でも数少ない「昆虫食の自動販売機」がありました。それを朝購入して学校で食べたそうです。

残念ながら昆虫食を検査で確定診断することは難しいです。血液検査をすることは可能ですが自費診療となるため私が努めていた病院では1万円近くかかってしまうものでした。この患者さんも今後食べなければいいのでと言って検査を希望されませんでした。(経口負荷試験を行うのも手ですが、目標量の設定やそもそもの食材の安全性が確実ではないので実施しませんでした)ラインイラスト

ということで、この患者さんは

「昆虫食アレルギー」

だと診断しました。

昆虫食アレルギー

昆虫食アレルギーは一般的な外来ではあまり経験するものではありません。特に小児科で出会うことはほとんどないので驚きました。(吸入アレルゲンとしてのガやゴキブリのアレルギーはよく経験しますが)

私からは、

・ダニアレルギーの関与もありえるため鼻炎症状があれば舌下免疫療法
・虫を食べるのを避ける
・甲殻類(エビやカニ)、貝類、エスカルゴにも注意
・甲殻類などでも症状が出てしまうようならばエピペン検討

といったお話をさせていただきました。

ということで、私が見たニュースは

コオロギ食がブーム?! 演奏しているコオロギのイラスト

というニュースでした。

昆虫食は

環境負荷が少ない
栄養価が高い
生産・加工しやすい

といった特徴があり、次世代フードとして注目されているようです。

しかし残念ながら昆虫食は食物アレルギーを引き起こす可能性は十分に高いと考えられます。

というのも根拠があって、昆虫食に使われる虫たちにはトロポミオシンというアレルゲン性タンパク質を持っているからです。このトロポミオシンはエビなどの甲殻類や貝類、ダニやゴキブリなどにも含まれているのです

実際にこの患者さんも、ハウスダスト(ダニ)アレルギーを持っていました。ダニのイラスト

さらにはエビやエスカルゴでもアレルギー症状がでたことがありました。エビフライのイラスト

 

 

個人的な予測ではありますが、、

昆虫食が一般的になっていけば昆虫食アレルギーも増えていく

と強く思います。
実際に日本におけるナッツ類アレルギーもナッツ輸入量の増加=食べる量の増加に伴い、ナッツ類アレルギーの患者が増えてきているという背景があります。

もしも今後、昆虫食がより身近となって食べたときに強いアレルギー症状に限らず、口が痒い・ノドが変な感じがする等があったらアレルギーを疑ってみてはいかがでしょうか。

芋虫とりんごこんなイラストの場合はリンゴの口腔アレルギー症候群と悩んでしまう??

食物アレルギーに限らず、アレルギーというのは患者さんの置かれてる環境、時代や文化を反映する側面があります。

私はアレルギー外来ではなるべく患者さんの話を聞いて探偵のように隠れている問題をあぶり出して、背景に沿った治療方針を提案していきたいと思っています。探偵姿のモグラ

 

今回は少し変わったアレルギーのお話をしました。

2023年4月3日開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎でアレルギーのことでお困りの方はご相談ください。
クリニックロゴマーク

 

 

タイトルとURLをコピーしました