夏のスキンケア
紫外線対策・汗対策・蚊対策について

サングラスした犬 小児科一般

お盆休みももう終わりですが、まだまだ毎日暑い日が続いています。

ひまわりと青空

熱中症には気をつけて過ごしましょう。
さて、夏は熱中症以外にも気をつけておきたいことがあります。

それは・・・

皮膚トラブル

冬は空気の乾燥を中心とした皮膚トラブルが発生することは以前にお知らせしました。
冬のスキンケア雪だるま

 

夏は湿度が高く空気の乾燥とは無縁の季節です。
それでは夏には皮膚トラブルは起きないのでしょうか?
そんなことはありません。夏には夏の注意点があるのでそれを意識したスキンケアが大切です。

今日は夏に気をつけたい皮膚対策について考えます。

紫外線

まず気をつけたいのは紫外線です。

紫外線の問題点

日光は紫外線・可視光線・赤外線と様々な波長の光線が含まれています。中でも紫外線(とくに紫外線B=UVBとよばれる波長290〜320nmの光線)は皮膚や目に対する障害性が強く問題となります。大人ではシミやシワなど美容の大敵となりますが、子どもたちにおいては急性の皮膚障害(サンバーン)として問題になります。また、これからの人生100年時代と言われるような長寿社会においては、幼少期から受け続けた紫外線総量によっては皮膚ガンなどのリスクが高くなる可能性も無視できません。

イノシシサングラス

最近(といっても20年以上前からですが)の母子手帳は【日光浴】ではなく【外気浴】を推奨されるようになっています。これは紫外線の有害性によるためと考えられます。

子どもたちへの紫外線対策がなぜ必要かと言えば・・・

・日焼けによる皮膚炎予防
・将来的な皮膚ガン予防

という二つの予防のためです。
大人の場合は美容的な観点(シミ・そばかす、しわ・たるみ予防)も大きな目的となるかもしれません。

紫外線は百害あって一利あり

と表現されることがあります。どのようなメリットがあるかといえばビタミンD合成に関与します。ただし食事などからの摂取でもある程度は補給できるのでバランスのよい食事を心がけて、数分〜10分程度の外気浴などで問題はなく大丈夫です。

日焼けは湿疹を引き起こします(日焼けは医学的には日光皮膚炎=日光湿疹と表現されるもので紫外線による肌の炎症・荒れです)。赤くなったり、ヒリヒリとして、ヒドイときには水ぶくれを起こすこともあります。

前にも書きましたが、子どもはもともと肌が弱い存在です。そのような子どもたちにとっては日焼けは湿疹が悪化する大きな原因となってしまいます

紫外線対策

それでは紫外線対策の基本は何でしょうか?

それは、、、日に当たらない

ということに尽きます。。。とはいっても天気の良い日に外で遊ぶことも子どもにとっては大切な経験です。

水辺で遊ぶ子どもたち

では、外で遊ぶとき特に紫外線が強い時間帯(とくに10時〜14時頃)に外にお出かけするときはどうすればよいでしょうか?

日焼け止め

を使いましょう。

他にも

・直射日光を避け日陰で遊ぶ
・帽子をかぶる

といった対策も重要です!

ひまわりとシロクマ

 

子どもたちの日焼け止めでとくに重視したいのはUV-Bから体を守るSPF値です。UV-Bは皮膚表面に作用して皮膚炎の原因になったり、シミ・そばかすを引き起こします。

※PA値はUV-Aから体を守るもので、シワやたるみなどの美容に関する指標とも言えます。PA値が高すぎると肌への刺激も強くなるためお子さんにおいてはPA++でよいでしょう(炎天下などではPA+++を考慮)

SPF値のおすすめは?

SPF=Sun Protection Factor
(紫外線防御指数)

SPFとは紫外線による皮膚ダメージ(赤くなったり湿疹が増悪する)を防ぐ効果の強さを示しています。

皆さんが薬局やコンビニで目にする日焼け止めにはSPF◯◯などと書いてあると思います。
この数字は何を示しているかというと・・・

仮に何も対策をしていないと、5分で赤くなってしまう紫外線環境に置かれているとすると、
SPF値30だと5分✕30=150分
SPF値50だと5分✕50=250分
で赤くなるということになります。

では、数値が高ければ高いほどよいかというと一概にそうとも言えません。

SPF値が高いと刺激が強くなったり使用感が悪くなってしまいます。しかも子どもたちは遊んで汗をたくさんかくので、せっかくSPF値の高い日焼け止めを塗っても汗で流れ落ちてしまいます。

汗をかいた猫

日焼け止めの種類としては日光吸収剤と日光散乱剤(いわゆるノンケミカル)に大別されますが子どもの場合は刺激の少ない散乱剤(ノンケミカル)が良いでしょう。

子どもたちの日焼け止めを選ぶときには普段使いとしてはSPF値は低めのものにして、こまめに塗り直すのが望ましいです。強い日差しが予想されるときにピンポイントで強めのものを使うというのが良い選択といえるでしょう。

注意
首の後ろの日焼け止めを忘れないようにしましょう。
診察していると、首を日焼けした子が多く見受けられます。

日焼け止めは手足と顔だけではなく首の後ろにもしっかりと塗りましょう!

 

 

・紫外線対策には日焼け止め活用
・ノンケミカル、SPF30前後、PA値++〜+++
・ピクニックなどの炎天下では強めのもの

 

汗対策

次に汗について考えます。

汗は皮膚に対して3つの問題を引き起こすと思います。それは

・汗疹(あせも)
・汗によるかぶれ
・汗アレルギー

それぞれについて説明します。

汗疹(あせも)

汗疹(あせも)というのは目詰まりです。通常ならば図の左のように汗が作られたら排出されていきますが、汗を大量にかくことで汗が正常に排泄されずに目詰まりを起こしてしまうことがあります。目詰まりを起こして行き場を失った汗が内側に炎症を起こしてしまうものが汗疹です。

あせもの模式図

最初は白っぽい汗疹(=白あせも)ができますがこれは正式には水晶様汗疹といって痛みや痒みもなく、その後のスキンケアに気をつけておけば通常は数週間で改善します。

進行すると赤い汗疹(=赤あせも)ができます。紅色汗疹といって、汗疹といえば多くはこれを指します。痒みは強く、チクチクとした痛みを感じることもあります。湿疹になってしまったり、もともとアトピー性皮膚炎がある方では悪化につながります。ステロイド軟膏などによる治療を行います。

汗によるかぶれ

汗によるかぶれは、汗に含まれる塩分やアンモニアが皮膚に長く留まることで刺激となってしまい、皮膚が荒れてしまった状態です。荒れてしまうと痒みを伴いますし、汗をかくたびに皮膚への刺激となりヒリヒリチクチクした痛みを伴うこともあります。

汗疹と違い目詰まりが影響するものではありません。

汗疹も汗によるかぶれも出来やすい場所は決まっていますが、アトピー性皮膚炎で湿疹が出来やすい場所とほとんど一致します。やはり汗や汚れが溜まりやすい場所は注意が必要です。

やはり治療はステロイド軟膏などが中心となります。

湿疹の好発部位

汗アレルギー

汗アレルギーと書きましたが、実際にはマラセチアアレルギーが汗による影響を受けます。マラセチアというのは皮膚に常在するカビ(真菌)ですが、これに対してアレルギーを持つ方がいます。

マラセチアは汗や皮脂が多い環境を好みます。汗をかいた状態のまま放置すると、皮膚が高温多湿な環境となってしまいマラセチアが繁殖します。すると、このマラセチアに対して過敏な反応を示す体質の方にとっては悪影響を及ぼします。毛包炎を起こすことも少なくありません。

マラセチアの場合はステロイドを使うと悪化することもあり、抗真菌薬を使うと改善することがありますがアトピー性皮膚炎を合併していることも多く治療に難渋することもあります。

汗対策

上に挙げた

汗疹・汗かぶれ・マラセチア

などの治療に最も重要なことは共通しており、一にも二にも予防です!
汗トラブル予防には

・皮膚を清潔に保つこと
・汗をかいたらこまめにタオル
・たくさん汗をかいたらシャワー浴※
・スキンケアで皮膚バリア

※シャワーのたびにボディソープを使うと大切な皮脂まで除去してしまうので、ボディソープなどで体を洗うのは1日1回にしておきましょう。

汗は他にもコリン性蕁麻疹という発汗や入浴後に出やすいポツポツとした発疹を引き起こすこともあります。これはアセチルコリンという神経伝達物質が関与するタイプの蕁麻疹で、汗をかくことが刺激になるため発汗後のケアをするだけでは落ち着かない可能性があります。コリン性蕁麻疹のときには、抗アレルギー薬などの内服薬が有効です。

虫(蚊)対策

最後は蚊の対策について考えます。

蚊は日本では痒みの原因として悪さをする程度ですが、世界に目を向けると感染症(マラリアなど)を媒介して人を死に至らしめる生物とされます。蚊によって命を落とす人の数は毎年70万人〜100万人いるといわれています。

日本で蚊が媒介する感染症で命を落とすことはまずありませんが、日本脳炎は過去には年間数千人規模で報告(現在はワクチン普及で年間10人以下)されていましたし、数年前にはデング熱が国内発症した報告もあります。環境が変化することで蚊が媒介する感染症も変化していくかもしれません。

今回は蚊による皮膚トラブルについて考えますが、蚊

蚊に刺されると?

面白いことに大人と子どもと赤ちゃんでそれぞれ反応が異なります。例外はありますが大人は即時型反応、未就学の子どもたちは遅延型反応、赤ちゃんは無反応ということが多いです。

大人
蚊にさされると即時型反応といって、蚊の唾液に対してアレルギー反応が起こりヒスタミンというアレルギー成分が放出されることで腫れと痒みが引き起こされます。(小さな蕁麻疹のようになりますが蕁麻疹も実はヒスタミンが放出されることで発生するので同じ機序といえます)この反応は刺されるとすぐに起きて2−3時間という短い時間で治まります。蚊に刺されたくま
子ども(入学前くらいの)
蚊に刺されると非即時型反応(遅延型反応)を起こします。これは即時型とは違い、白血球という体を守る細胞が刺された場所に集まってきます。白血球は手当り次第に周りに攻撃をしかけて炎症物質を放出することで腫れたり痒くなってしまいます。この炎症反応には時間がかかるため、刺された直後ではなく半日〜2日経ってから現れて、数日間に渡って症状が続いてしまいます。蚊
赤ちゃん
新生児や冬生まれではじめての夏などの場合は蚊に刺されても無反応なことが多いです。これは、まだ免疫が未熟なためですが上述したように感染の問題もあるかもしれませんし、刺されすぎると反応してくるかもしれないので蚊対策は必要です。蚊取り線香

 

それではなぜ蚊に刺されることが肌によくないのでしょうか

子どもは蚊に刺されて痒くなるとすぐに掻き壊してしまいます。掻き壊すとそこで「とびひ(伝染性膿痂疹)」などの二次感染を起こしてしまいます。

子どもたちはお肌が弱いことが多いですが、それはすなわち皮膚バリア機能が弱いということに他なりません。バリア機能が弱ければ当然とびひなども発生しやすくなってしまいます。

なるべく蚊に刺されないようにしましょう。

蚊に刺されないために

室内にいるときと、お出かけするときとで対策は変わります。

室内では

窓やドアを開けっ放しにしない。網戸がほつれいたり、隙間が少しでも開いていると侵入します。できれば窓を閉めて熱中症対策も兼ねてクーラーで過ごすのがよいかもしれません。

・蚊は昼間は家具の陰などに隠れていて、夜に活動することが多いです。虫除けグッズは日中に蚊が少ないように見えても使っておきましょう。そうすれば寝てるときに耳元に蚊がブ〜ンと飛んで来ることも減ると思います。

屋外では

・虫が多い環境では長袖などを選択して肌の露出を極力減らしましょう。

・そもそも蚊が多い場所に行かないようにしましょう。といっても子どもたちはそういったところが好きだろうから避けられないかもしれません…茂みで遊ぶ子ども

水たまりを作らないようにしましょう。空き缶に溜まった水でも蚊は繁殖可能です。ベランダなどに水がたまるものを置かないように注意してください。

・お出かけのときには虫除けスプレーを使いましょう。
主にディートとイカリジンがありますが子どもに使うならばイカリジンが安全とされています。傾向としてはディートは強いけど使用回数に制限があり子どもに使うときには確認が必要、イカリジンはそこそこの強さで安全に何回でも使えるといったところです。状況に応じて使い分けるのもよいと思います。(ピクニックなどではディート、普段はイカリジンなど)
※虫除けスプレーは日焼け止めなど塗り薬を塗る前に振りかけると効果が減りますので、最後の最後に散布しましょう。

蚊に刺されたら

蚊に刺されたときの反応は即時型でも遅延型でも血管拡張が大きな原因の一つなので冷やすことがまず大事です。汚れがあると二次感染も起こしやすいため、洗い流すことも忘れずに。おくすりとしては抗ヒスタミン薬とステロイド軟膏が有効です。

冷やす
血管の拡張を抑えて腫れや痒みの進行を食い止めます。
洗って清潔に
二次感染(=とびひなど)を予防するために清潔に。
ステロイド軟膏
刺されたところをキレイにしたらステロイド軟膏を塗って炎症を鎮めましょう。虫刺されのときには長期間塗布するわけでは無いので少し強めのステロイドでも大丈夫です。軟膏
抗ヒスタミン薬
ヒスタミンというアレルギー物質の作用を抑えてくれます。痒みを鎮めてくれるので掻き壊しのリスクも減ります。内服薬
とびひになったら?
抗生剤軟膏や内服が必要になるため受診しましょう。とびひ

まとめ

今回は夏のスキンケアについて書きました。

スキンケアで重要なのは保湿剤を塗ることだけではなく環境調整も欠かせません。もう夏も後半ですが、

紫外線対策

汗対策

虫対策

を普段から意識してもらえればと思います。

 

当院では赤ちゃんからのスキンケアを推奨しています。
寒川・茅ヶ崎でこどもの皮膚やアレルギーのこと、その他お体のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。

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