アトピー性皮膚炎〜診断〜

小児科

アトピーってどんな病気?

アトピーとかアトピー性皮膚炎という言葉は皆さん耳にしたことがあると思います。

では、

アトピー性皮膚炎とはなんですか?

と聞かれたら何と答えるのが正解でしょうか。

アトピーとは?

 

例えば

肺炎=肺にバイキンが入って熱や咳が出る病気

花粉症=目や鼻に花粉が付いてくしゃみ・鼻水や目のかゆみが出る病気

です。

では、アトピー性皮膚炎とは何でしょうか。

そもそも同じような症状で皮膚科や小児科に罹っていても、アトピー性皮膚炎と診断される子もいれば、アトピーと診断されない子もいます。この違いは何でしょうか?

ということで、今日はアトピー性皮膚炎について考えてみます。

アトピー性皮膚炎とは

まずは定義の確認です。

アトピー性皮膚炎は,増悪と軽快を繰り返す瘙痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くは「アトピー素因」を持つ。特徴的な左右対称性の分布を示す湿疹性の疾患で,年齢により好発部位が異なる。乳児期あるいは幼児期から発症し小児期に寛解するか,あるいは寛解することなく再発を繰り返し,症状が成人まで持続する特徴的な湿疹病変が慢性的にみられる。(アトピー性皮膚炎ガイドライン2021)


・・
・・・

寝てるモグラ

やはり病気の定義は文字で読むと難しいですね。少し分かりやすくまとめるとこうなります。

アトピー性皮膚炎の定義(まとめ版)
・悪くなったり良くなったりを繰り返す
・めちゃくちゃ痒い
・アトピー素因※を持つ子が多い
・出やすい場所は決まっている
・基本は左右対称
・治っても再発することがある
アトピー性皮膚炎ガイドライン2021より・表現は大幅に改変しています

※アトピー素因とは?
①血の繋がりのある家族にアレルギー疾患の方がいる(家族歴)
②喘息や食物アレルギーなど他のアレルギーに罹っている(既往歴)
③IgE抗体を産生しやすい(アレルゲンに対する抗体を作りやすい)

出やすい場所が決まっていると書きましたが・・・

肘や膝裏などは好発部位です。

赤ちゃんだとこんな感じでお腹や顔に出ることも多いです

目の周りは全年齢で好発部位と言えます。掻きむしりすぎると若年性白内障のリスクが高まると言われています。

手湿疹は子どもから大人まで経験しますが、薬が効きづらく治りにくいですね。

 

診断について注目してもらいたいのは、アトピー性皮膚炎を診断するために必要となるような決定的な検査項目はないということです。

医者とクエスチョンマーク

これは以前に書いた喘息の定義と似ているところです。

検査だけに頼るのではなくて患者さんの病歴を聞き、出ている症状(理学所見)をきちんと診ることが重要ということです。

血液検査は診断の手助けにはなりますが、逆に言うと診断の決め手にはなりません。

実際に当院を受診する方の中には検査をするつもりでお越し頂いても、検査結果が治療方針の変更に結びつくものでなければ検査をお断りすることもあります。

ここには乳幼児喘息の診断の難しさに共通した悩ましさがあります。

 

アトピー性皮膚炎はそれまでの経過がより重要なものといえます。皮膚の所見を見ればその時点で概ねアトピー性皮膚炎らしいかどうかの判断はつきますが、大前提である「慢性的な」経過があるかどうかがより大切になります。

皮膚の相談で初めてのクリニックや病院を相談するときなどは、それまでの経過をまとめておくと診断がよりスムーズになると思います。

また、アトピー性皮膚炎は症状が落ち着く時期もあります。受診したときに症状が丁度収まっていると過小評価されがちです。今はスマホの写真がとても鮮明になっていますので皮膚症状などは気づいたときに写真を撮って記録を残すとよいでしょう。

メガネの犬と猫

 

 

AIに聞いたアトピー性皮膚炎

話題のChatGPTに「アトピーって何」と質問するとこのような回答でした。

「アトピー」とは、アトピー性皮膚炎の略称です。アトピー性皮膚炎は、肌が炎症を起こし、かゆみ、乾燥、赤み、ひび割れ、ただれ、腫れ、かさぶた、びらんなどの症状が現れる、慢性的な皮膚病の一種です。この病気は、遺伝的な要因やアレルギー反応が原因で発生することが多く、幼児期に発症することが多いですが、成人になっても持続することがあります。
アトピーは、アレルギー疾患の1つであり、喘息や花粉症などとともにアレルギー三大疾患として知られています。症状を抑えるためには、適切なスキンケアや保湿、かゆみを和らげる薬の使用、アレルギー源を避けることが重要です。重度の場合は、抗アレルギー薬や免疫抑制剤の処方が必要になることもあります。

・・・AIはすごいですね。

輪になった人間とロボット間違った使い方をされるのは心配ですが、うまく医療に応用されて誰でもすぐに診察を受けられたり診療の補助的な役割として誤診や見逃しが減る世の中になるといいですね。

ひとまず、アトピーに関する質問への回答は要領を得ているし後半にはスキンケアや保湿の重要性まで書かれていてさすがですね。一般になにか補足するならば最近では様々な新薬が出てきており患者さんの重症度に合わせた治療の選択が可能になっています。

 

患者さんはどれくらいいるのか?

アトピー性皮膚炎の有症率は年代によりばらつきがありますが、国内総患者数は約50万人とされており、年齢別の患者数はグラフのようになります。

アトピーのグラフ
独立行政法人環境再生保全機構HPより

子どものみならず20〜40歳代という大人でも比較的頻度の高い身近な病気であることがわかります。高齢者に少ないのは、高齢になると治っていくのかそれとも昔はアレルギー患者が少なかったからで今後は高齢者にも増えていくのかは分かりません。

抱っこされた赤ちゃん当院は小児科ですが、保護者の中にもアトピー性皮膚炎で悩む方は多い印象です。実際に診療しているときにもお子さんを支えるママやパパの手を見てもアトピー性皮膚炎をお持ちなのかなと推測できる方も少なくありません。

 

 

ママやパパのお肌トラブルも簡単なものならば相談に乗りますのでお声かけください!

 

また、予後(将来どうなるのか)調査については様々な報告があり、統一された見解はなさそうです。おそらくは一旦良くなっても再発・再燃することが影響するのでしょう。ただいずれにせよ乳幼児期にピークを迎えることは間違いなさそうです。

アトピー性皮膚炎と診断された方は再発することも視野に入れてスキンケアなどに気をつけたり、アレルギーかかりつけ医があることが望ましいと思います。

 

アトピー性皮膚炎の診断

診療していていつも思うことですが

「かかりつけでアトピー性皮膚炎と診断されていない」けれど、長年に渡り湿疹などお肌のトラブルで悩んでいる子の大半はアトピー性皮膚炎の定義に当てはまる。

ということです。なぜアトピー性皮膚炎と診断されていないかは様々な事情があるでしょうから言及しませんが、このような子がたくさんいるとすればアトピー性皮膚炎患者は全国で報告されている数よりも潜在的な患者さんはもっと多いのではないかと思います。

虫眼鏡をもったうさぎ

アトピー性皮膚炎と診断されようがされまいが、いままさに出ている皮膚症状への治療内容はほとんど変わりません。

具体的には皮疹の強さに応じてステロイド軟膏を中心として、痒みを抑えるために抗ヒスタミン薬を使用します。

それでは何のためにアトピー性皮膚炎と診断するのでしょうか。あくまでも私の個人的な考えですが

アトピー性皮膚炎と診断することは覚悟を持つ

ということではないでしょうか。
自然に治ることもありますが、残念ながら現在の医療でアトピー性皮膚炎を治療で完治させることはできません。症状を抑えて良い状態を維持させることが治療の目的となります。

そしてその維持する期間は人によっては数年〜数十年に渡ります。

すなわち、アトピー性皮膚炎と診断することはこの病気と長く付き合っていくという覚悟を決めるものといえます。

薬を使って落ち着いても、何度も再燃するのがアレルギー疾患です。私達かかりつけ医も患者さんと向き合って病気に立ち向かう覚悟が必要だと思います。

指切り

 

正しい診断はより良い治療への第一歩です。

アトピー性皮膚炎とは言われていないが長く湿疹で悩んでいる方は主治医に相談してみましょう。
お近くの方は是非当院へご相談ください。

 

今回はアトピー性皮膚炎の中でも診断について書きました。
治療編についても近いうちにブログで発信したいと思います。

2023年4月3日開業したばかりの小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎でこどもの健康やアレルギーのことでお困りの方はご相談ください。

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