花粉症の治療

アレルギー科

花粉症については以前にブログで書きました。

ここでは舌下免疫療法について書きましたが、今回はそれの補足として・・・

今まさに症状があって困っているんだ!!

怒ってるおじさん

という方に向けての治療法まとめです。

治療の決め方・考え方

花粉症にはガイドライン(鼻アレルギーガイドライン2020)があり、疫学や診断そして治療方針などについても分かりやすくまとまっています。そのため日本のどこでも標準的な治療が受けられます。しかし、患者さんによって方針は変える必要があります。

生活スタイルが異なる
患者さんは皆さんそれぞれ生活スタイルが違います。忙しくて薬を飲むのを忘れがちな人もいればマメに薬を管理して忘れることがない人もいるでしょう。車を運転する方や受験生では眠気のある薬はNGです。眠そうな人
体質が異なる
人によってこの薬は効くけどあの薬は効かないなどが異なります。極端な話、使ってみなければ分からない部分もあるため色々と試していきます。かかりつけで普段からどういった薬が効くか好みはどうかなど分かっていれば相談しやすいと思います。
また、花粉症の薬と同時に使えない薬などもあるため合併する基礎疾患によっても治療法は異なります。薬
考え方が異なる
花粉症は命に関わる病気ではありません。(QOLは大きく下げますが・・)そのため、患者さんによっては薬のデメリットを考えて治療したくないと言われることもあります。最終的にはいくつかの提案をして患者さん・保護者とともに治療方針を決定していくことが大切だと思います。もちろん、その提案は誠意を持って良いと思われる治療法を提案することは言うまでもありません。考え方の異なる3人のイラスト
他にも細かい理由はありますが、とにかく最終的な治療方針はガイドラインだけを見て決めるわけではなく患者さんの背景や将来を考えて決めていくべきというのが私の持論です。
また、アレルゲンに触れないことがアレルギー治療の根幹をなすことから花粉と触れ合う機会を減らすことも大切です。

抗ヒスタミン薬(抗アレルギー薬)

最近は市販薬(OTC医薬品)でも処方する薬と遜色ありません。一時的にその場を凌ぐ形であればおすすめですが、長期使用となると薬の効果確認や安全性そして費用(とくにお子さんの場合ですと小児医療証がある地域などでは費用についても悩ましいと思います)などの観点から受診して主治医と相談の上で処方してもらうことを推奨します。

犬の医者

抗ヒスタミン薬はヒスタミンというアレルギー成分をブロックしてくれるお薬で様々なアレルギー疾患に使用されます。

第1世代と第2世代に大きく分けられますが、アレルギー専門医の立場からは第1世代は副作用を考慮して使用は限定的であるべきかと考えます。(絶対に使ってはいけないわけではありません)

現在、抗ヒスタミン薬とくに粉薬タイプのものは全国的に流通が乏しくなっているようなのでご注意下さい。当日にお薬を受け取れないこともあるかもしれません。

抗ヒスタミン薬は副作用が少ない(体に刺激を加えて改善するタイプの薬ではなく、刺激が加わらないようにブロックするタイプの薬なので副作用が少ないのです)

しかし、抗ヒスタミン薬が脳内に入ってしまうと眠気を引き起こしたり痙攣のリスクがあがる薬もあることから選択には注意が必要です。先程書いたように第二世代から薬を選ぶのがよいでしょう。

個人的に安全と効果のバランスを考えてよく使うのは

生後6ヶ月〜2歳未満:レボセチリジンシロップ、フェキソフェナジンドライシロップ
2歳〜:オロパタジン顆粒
3歳〜:ロラタジンドライシロップ
7歳〜:オロパタジンOD錠、アレグラ錠

などです。使い慣れているということであって、他にもいい薬はたくさんあります。

また、12歳以上、15歳以上になると更に選択肢が増えます。基本的にはどれが効くかは前述したように個人差が大きいので色々と試すのが良いと思います。

※第1世代抗ヒスタミン薬は安全??
第1世代抗ヒスタミン薬は今も頻用されています。赤ちゃんにも適応があり安全と思われるかもしれませんが、昔から存在しているため小さい子にも適応があるだけで決して副作用が少ないというわけではありません。大きな声では言えませんが。。

ステロイド薬

花粉症に使われるステロイドとしては鼻スプレー・目薬・飲み薬が主体です。スギ花粉の影響で肌が荒れることもあるのでその時は軟膏も使用することもあります。

①鼻噴霧ステロイド薬

効果は抗ヒスタミン薬よりも期待できるという論文もありアレルギー性鼻炎/花粉症の第一選択薬といえます。副作用も少ない上に効果が期待できるとても使いやすい薬です。さらにはアレルギー性結膜炎(目の症状)にも効果があると報告されています。

私は喘息を合併しているお子さんなどでは特に積極的に推奨しています。鼻と目、鼻と気道はそれぞれ繋がっています。鼻を良くすることはある意味で吸入するタイプのアレルゲンが引き起こす症状(鼻炎・結膜炎・喘息など)に対する要と考えられるからです。

点鼻しているところ

即効性にはややかけるので、花粉症の治療を考えるときには点鼻ステロイドを早期から検討することは重要です。ただし効くまでに何週間もかかるわけではないので気づいたら早めに開始するというスタンスで良いでしょう。

処方薬ならばアラミストやナゾネックス、フルナーゼなどになります。

②点眼

花粉症といえば目薬が思い浮かぶ方も多いと思います。花粉症で用いられるのは抗ヒスタミン薬かステロイド薬となります。目がすっきりするという理由で違う薬を使うこともあるかもしれません。

ちなみにカップ型の眼の洗浄はマブタの外側についた汚れやバイキンを眼の中に送り込んでしまうこともあるため私は推奨しておりません。

眼を洗うところ

人工涙液などで洗い流すほうがおすすめです。
抗ヒスタミン薬の目薬は痒みなどに即効性もあり効果的ですが、目薬でも第一世代抗ヒスタミン薬は眠気を誘発することがあるので注意してください。やはり第二世代抗ヒスタミン薬の目薬が良いでしょう。

パタノール点眼薬やアレジオン点眼薬などが代表的です。

成人だと1日2回とさす回数が少なく済むアレジオンLX点眼もあります。

目薬

ステロイド点眼薬は強い炎症を合併したときには効果的です。重症の春季カタルと呼ばれる病気になってしまうと激しいかゆみだけではなく、目も開けられず強い痛みを伴います。このようなときにはステロイド点眼薬が必要になりますが、ステロイド点眼薬は他のステロイド外用薬と違い副作用に特に気をつける必要があります。というのも、

眼圧が上がってしまう

ことがあるためです。ステロイドによる緑内障のリスクは考えておかなければいけません。私はステロイド点眼まで必要となるような花粉症のお子さんでは眼科併診を推奨しています。きちんと慎重に扱えば決して怖い薬ではなくとても有効ですので処方されることがあったら指示通りに使いましょう。

③内服

ステロイド内服は効果は協力ですが全身的な副作用に注意が必要になります。とくにお子さんでステロイド内服を漫然と使うことは危険を伴います。必ず主治医の指示に従って使用してください。

ステロイドは適切に使用すれば安全・安心でとても効果的ですがダラダラと使うことには慎重になるべきだと思います。

ガイドラインでは最重症のときにはその他の種々の治療を行った上でのオプションとして1週間程度の使用を検討という使用法にとどまっています。

 

漢方薬

花粉症の漢方薬といえば

小青竜湯

が代表です。味は苦くて酸っぱいといった印象でお世辞にも飲みやすいとは言えませんが効果は高く希望される患者さんも少なくありません。花粉症やアレルギー性鼻炎には「ひとまず小青竜湯」と言っていいくらいです。

苦い顔した猫

その他の薬との併用で問題になることもほとんどないため苦い薬が得意な方にはオススメです。

 

その他の薬

アレルギーを抑えるお薬は前述した抗ヒスタミン薬(ヒスタミンというアレルギー成分を抑える薬)が一般的ですが、その他にもいくつかの種類があります。

中には他の薬は効果が乏しかったのにこれらの薬が効くといったこともあります。

他の治療が無効のときなどは検討する価値があるでしょう。

抗ロイコトリエン拮抗薬:プランルカストやモンテルカストなど
抗プロスタグランジンD2・トロンボキサンA2薬:バイナス
ケミカルメディエーター遊離阻害薬:インタール、リザベンなど

また、特殊な薬として

オマリズマブ:ゾレア

という薬も花粉症に適応があります。これはアレルギー反応の中心となる免疫細胞に対抗するための薬です。注射薬で少し痛みを伴うため負担は大きいですが接種することでの効果は高く期待できます。血液検査を行った上で適応があれば治療ができますが比較的高額な治療になります。症状や検査値にもよりますが12歳から使用できます(適応がないこともあります)。

注射器持ったうさぎ

舌下免疫療法薬

色々と書いてきましたが、今までに書いた薬すべてに共通して言えることとして

対症療法薬に過ぎない

ということはアレルギー治療の課題です。どういうことかというと、病気を根本的に治すものではなく一時的にしのぐだけの薬。ということです。

例えば、頭痛持ちの人が痛み止めを飲むことは対症療法です。その薬が頭痛のもとになる病気を直しているのではなくあくまでも一時的に痛みを取り除くだけです。
インフルエンザの時に解熱剤を使ってもウイルスは死にませんが熱は一時的に下がって少し楽に過ごせますが、あくまでもインフルエンザウイルスを退治することはありません。

このように症状を抑えるがベースにある病気を治さない薬を対象療法薬と呼びます。

逆に細菌感染症たとえば肺炎に罹った時に抗生剤を使用することは肺炎を引き起こす細菌を殺して根本的に肺炎という病気を治すものなので原因療法薬と呼びます。

負けたバイキン

残念ながら、花粉症に限らずアレルギーの治療はほぼ全てがこの対症療法薬となります。

しかし、、、

舌下免疫療法

舌下免疫療法(皮下免疫療法も同様です)はアレルギーを根本から改善(=アレルギー史を変える)する可能性がある治療です。今シーズンの花粉症状をまずは対症療法薬で乗り越えて、ゴールデンウィーク以降に舌下免疫療法をはじめることを推奨します。

来年の花粉症を抑えるための治療は今年から始まります。

まとめ

私が普段行う花粉症治療の基本戦略はシンプルに

鼻噴霧ステロイド+抗ヒスタミン薬

とガイドラインでも推奨されているものです。それでは具体的に何という薬をよく使うかを示します(あくまでも私が使い慣れている薬ですので、その他の薬より優れている・劣っているというわけではないのでご注意下さい。分かりやすいように具体的な名前を出させてもらいました。)

抗ヒスタミン薬は1日1回で済むクラリチンを選択。
鼻噴霧ステロイドとしてアラミストorナゾネックス

この組み合わせならば1日1回の投与で済むため、生活様式にかかわらず導入しやすいと思います。

上記で効果がなければクラリチンをその他の抗ヒスタミン薬に変更したり、シングレアキプレスなどの違うタイプの抗アレルギー薬を併用。薬に抵抗がなければ小青竜湯など漢方薬を使用。

目の症状が強ければパタノール点眼薬もしくはアレジオン点眼薬
鼻の症状が強ければリボスチン点鼻インタール点鼻などをステロイド点鼻と併用。

成人や受験生などであれば状況によってステロイド内服アドレナリン点鼻を一時的に使用。

それでも駄目なら年齢(12歳以上)・検査データが適応内(総IgE抗体30〜1500)であれば生物学的製剤ゾレアの使用を検討。

それでもどうしようもなければ
鼻の形態異常合併の可能性もあるため耳鼻科に相談して手術の必要性について確認したり、目の症状については眼科に相談します。

※青文字の薬は全て商品名になります

そして、大事なことですが花粉飛散時期が過ぎたら舌下免疫療法を提案します。
当院ではドロップスクリーンという指先から1滴だけ血液採取で花粉症の診断が可能です。スギ以外にも同時に多くのアレルゲン検索ができるすぐれものですのでご希望の方はご相談ください。

最後に・・・

この記事を書いている今まさにアレルギー学会主催の総合アレルギー講習会が開催されていますが、免疫療法ー鼻炎のセッションで(舌下)免疫療法について

アレルゲン免疫療法はアレルギー疾患の自然史を修飾する唯一の根本的治療で、全ての重症度の患者に推奨される治療である。
アレルゲン免疫療法は、新規アレルゲン感作や他のアレルギー疾患の発症を抑制する可能性のある治療であり、今後のさらなる治験の報告が期待される。

とされています。

低年齢での花粉症患者の増加は眼を見張るものがあります。舌下免疫療法は若ければ若いほど効果的と言って良いと思います。すぐに効果が出るものではありませんが将来のアレルギー症状軽減のために是非ご検討ください。

 

2023年4月3日開業の小児科・アレルギー科クリニックです。
寒川・茅ヶ崎でアレルギーのことでお困りの方はご相談ください。

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