RSウイルスと新ワクチン
《アブリスボ》

クリニック

今日は、小さなお子さんにとって問題になりやすい【RSウイルス】についてまとめました。

そして、RSウイルスから赤ちゃんを守る画期的な新ワクチン【アブリスボ】についてもお知らせします。RSウイルスについて正しく理解して、どう対処すれば良いのかを考えましょう!指差す医者

 

RSウイルスって何?

RSウイルス(Respiratory Syncytial ウイルス)は、主に乳幼児や高齢者に重篤な呼吸器感染症を引き起こすことで知られるウイルスです。

10年ほど前までは秋から冬にかけて流行していましたが、いまでは夏に流行するようになってしまいました。(参考:https://www.niid.go.jp/niid/ja/10/2096-weeklygraph/1661-21rsv.html

実際にこのブログを書いているいま現在(2024年6月26日)も日々患者さんが発生しています。

ひまわりライン

このウイルスは、風邪のような症状を引き起こしますが、生後まもない乳児早期の赤ちゃんでは入院になることも少なくありません。

RSウイルス=風邪?

簡単に言ってしまえば、RSウイルス感染症はいわゆる風邪といえます。具体的には、以下のような症状が見られます…

– 鼻水やくしゃみ
– 咳
– 発熱
– 食欲不振

ところが学童や大人にとってはただの風邪でも、赤ちゃんにとっては細気管支炎を引き起こして呼吸困難やゼーゼーなどを引き起こす怖い感染症という側面もあります。

2歳になるまでに、ほぼ100%の子どもたちが一度はRSウイルスに感染するといわれています。とくに初めて感染したときは重症化してしまうこともあり入院に至ることも少なくありません。私が小児科後期研修医の頃にはRSウイルスはまだ冬の風邪でしたが、流行期には4人部屋がRSウイルスの子で一杯になっているなんてことも少なくありませんでした。吸入の蒸気で部屋がモクモクしていることもありました。

また、早産児、肺や心臓に生まれつきの病気があるお子さんでは、RSウイルスに感染すると重症化しやすいことが分かっています。

RSウイルス
たかが風邪のウイルス
されど新生児・乳児では要注意
RSウイルスの検査は原則として1歳未満で症状からRSウイルスが疑われるお子さんにしか保険適応がありません。1歳以上の子どもたちではただの風邪で終わることが多いからです。(実際には咳が長引いたり、ご高齢者の重篤な呼吸器疾患に繋がることもあるのですが・・・)

治療方法

残念ながら、RSウイルスを直接退治できる特効薬となるような治療は存在しません。

基本的には症状を和らげる『対症療法』が中心となります。熱に対しては解熱剤で熱を下げたり、痰絡みには去痰薬、ゼーゼーがあれば気管支拡張剤などを用いることもあります。また、十分な休息を取ることがとても大切です。

それでも重症化してしまった場合には、入院して酸素投与や点滴が必要となることもあります。

日常的な感染予防で重要なのは手洗いです。

手洗い・うがい

赤ちゃんのお世話をする前後にもしっかりと手洗いをしましょう。また、幼稚園や保育園に通っているお兄ちゃんお姉ちゃんが風邪を引いた時は要注意です。RSウイルスは飛沫感染をするので可能ならばお兄ちゃんお姉ちゃんにはマスクをしてもらい、なるべく離れて過ごしたり部屋の換気を徹底しましょう。

RSウイルスだけに限りませんが…

感染症予防の基本は手指衛生

シナジスについて

RSウイルスに対する予防策として以前から【シナジス】というワクチンがありますが、現状では早産、心疾患や肺疾患を持ったお子さんなどの限られた条件でのみ保険適応となります。

しかし、そういった病気を持ったお子さん以外は、自費での接種となります。

ところが、

残念ながらこのワクチンはとても高額(体重にもよりますが1回接種で最低5万円以上、毎月接種する必要があるので1シーズンで何十万円もかかります・・・)なので、普通はとても手が出るようなものではありません。

そのため、今まではシナジスの対象とならない多くのお子さんは日常的な予防策を講じるしかありませんでしたが、先日画期的なワクチンが発売されました。

アブリスボ(Abrysvo)について

アブリスボ(Abrysvo)は、赤ちゃんをRSウイルスから守るためのワクチンですが接種するのは妊婦さんという驚きのワクチンです。

妊娠中に接種することでへその緒を通じて、ママからお腹の赤ちゃんへとRSウイルスを退治するための抗体が移行します。

この作用により、新生児期から生後6ヶ月までの長期間に渡ってRSウイルスへの感染リスクが大幅に減少し、重篤な症状を避けることが期待できるのです。

妊娠24週から36週(推奨は28週〜)の間に接種することで、効果的な抗体が新生児に移行します。ただし、ワクチンを打ってから14日以内に出産された場合には、ママから赤ちゃんへの抗体移行が不十分でワクチンの効果が存分に発揮されない可能性がありますので注意してください。

例えば、36週直前にワクチンを打った場合にはお産が早まって37週過ぎに出生したら10日間程度しか空いておらず、せっかくのワクチンの効果が存分に発揮されないかもしれません。

接種をお考えの方は28週を過ぎたら早めに近隣の実施施設に相談してみてください。
当院でも2024年7月中旬から開始予定です。

まとめ

RSウイルスは、生まれたばかりの小さなお子さんにとっては時に脅威となってしまいます。

正しい知識と予防策で少しでもその可能性を減らしていきましょう。まずは日常生活での手洗いなどの小さな心がけが、お子さんを重症化から守る第一歩です。

・RSウイルスはほぼ全ての子どもが2歳までにかかります。
・乳児早期にかかってしまうと重症化することもあります。
手洗いを中心とした感染予防を大切にしてください。
・妊娠中であればアブリスボというワクチンもあります。

 

寒川・茅ヶ崎・藤沢・平塚で予防接種やお子さんの健康のことでお困りの方はお気軽にご相談ください。クリニックロゴマーク

タイトルとURLをコピーしました